Microsoftが興味深いプロモーションを開始した。米国時間2019年2月6日公開の公式ブログでは、Office 2019とOffice 365を対決させ、Office 365の優位性をアピールする動画を作成したことを報告している。米国のOffice 365サイトにも同様の動画を挿入した。
動画は双子がOffice 2019版とOffice 365版のWord、Excel、PowerPointで同様の作業を行い、どちらが素早く処理を終えるか競うというもの。たとえばExcel編では「50州に関するのデータをスプレッドシートに記入する」というお題のもと、州の首都、州の人口、最大都市を入力する。
Office 2019版Excelを使うジェレミーはBingで人口数などを検索しているが、Office 365版Excelを使うネイサンは地理のデータ型を使ってサクサクと入力を済ませた。
Excelのデータ型をサポートするのはOffice 365版のみで、2018年9月24日から一般提供を開始したOffice 2019は対応していない。下図に示したスライドは、日本マイクロソフトが2018年11月13日開催した「最新のOffice 、Windows 10に関する勉強会セミナー」から抜粋したものだが、赤字で強調しているようにOffice 2019はOffice 365 ProPlusが実装した最新機能の一部を搭載する。
MicrosoftからすればOffice 2019、Office 365のどちらが売れても有益なはず。しかし、先の動画が強調しているのはOffice 365の優位性である。読者の中には毎月あるいは毎年費用が発生するサブスクリプションモデルではなく、1度購入すればその後はずっと使える永続的なライセンスの方がいいという人もいるかもしれないが、ここで金額的な計算を試みたい。
「Office Home & Business 2019」は3万7,584円、「Office Personal 2019」は3万2,184円だが、いずれも永続ライセンスのため、1度支払えば使い続けることが可能だ。
一方で「Office 365 Solo」は1万2,744円の支払いが毎年発生するので、3年目の支払い(1万2,744×3=3万8,232円)でOffice Home & Business 2019の価格を上回る。ただし、Office 365 Soloは1TBのOneDrive、Skypeから固定電話・携帯電話への発信が毎月60分間無料が付与する。オンラインストレージの利便性を考えると有益だ。
とはいえ、すでにほかのオンラインストレージを契約している、もしくはオンラインストレージは不要だというユーザーに取ってOffice 365 Soloは、前述のとおり3年目以降は高額な製品になることも事実である。Microsoftとしてはオンラインストレージなどの運用費を差し引いても、Office 365を消費者に購入してもらった方が利益につながるという判断があるのだろう。
先の公式ブログでは、「Office 365はAI(人工知能)機能を用いてユーザーの生産性を向上させるが、Office 2019はクラウドに接続せず、AI機能も備えていない」と述べている。利用者が増えれば増えるほど学習モデルに用いるデータは潤沢となり、研究速度もアップするといった側面を踏まえても、Microsoftがクラウド利用を前提としたOffice 365を推すのは至極当然だ。
多くのソフトウェアが売り切りのパッケージから、サブスクリプションモデルに移行している。Microsoftの戦略を踏まえるとOffice 2019は最後のスタンドアローンアプリケーションとなりそうだ。
阿久津良和(Cactus)