リンクスの事業成長に向けた基本戦略

リンクスは、11月19日に名古屋、11月20日に東京、そして11月22日に大阪にてプライベートカンファレンス「LINX Days 2018」を開催。基調講演に同社の代表取締役社長を務める村上慶氏が登壇。「リンクスのビジョンとチャレンジ」と題し、同社の現状と今後の戦略について語った。

  • 村上慶氏

    「LINX Days 2018」に登壇した同社 代表取締役社長の村上慶氏

リンクスはこれまで、コンピュータビジョン、特にマシンビジョンを用いて工場内の画像処理の高度化を可能とするソリューションの提供を積極的に進めてきたが、現在は工場の外も含めた5つのポートフォリオでのビジネスの拡大を目指しているという。

その基本戦略としては、技術の導入期から普及機入り、成長期に向かおうとしている技術の中でも、世界の中からよりよいものを提供しようというもの。「2010年は2Dのマシンビジョンが成長期真っただ中で、そこにリソースの全力投入を行ってきた。2018年の現在はというと、3Dのマシンビジョンが成長期を迎え、そして5年後に羽ばたかせたい技術を仕込む段階にある」と村上氏は語っており、現在の同社のポートフォリオは、5つのセグメントに分かれた形となっているとする。

  • リンクスの戦略
  • リンクスの戦略
  • リンクスの戦略。導入期から成長期にかかる技術を仕込むことで、成長期における普及拡大での市場獲得を目指す (本レポートのスライドはすべてLINX Days 2018にて村上氏が発表した資料の抜粋である)

5つのポートフォリオで成長を目指す

1つ目が従来から行ってきた工場内での「マシンビジョン」の活用。2Dから3Dへ、そして2017年にはAIやスペクトルカメラの活用などが始まったという。

2つ目が2012年に参入した「PLC」。マシンビジョンを軸に、もっと広い範囲でものづくり分野に貢献していくためには何か、という視点からものづくり産業を見た際に、PLCの扱いが日本と世界では違うという点から、今後のものづくり産業の発展に必要なソリューションとして、ハードウェアに依存しないPLCの提供を決めたとする。

「ヤマハ発動機とコンテックが2016年に採用を決定。2018年に山洋電気も採用することを決定した。また、2019年にも1社が年間5000台規模で製品投入することが決定している」とするほか、自動車メーカーも独自開発のコントローラに採用しており、これらを合算すると、2023年には年間5~20万台が流通するエコシステムが構築される見込みだという。

  • ハードウェアに依存しないPLC

    ハードウェアに依存しないPLCの市場は2023年に国内で5~20万台の規模に成長すると同社では見込んでいる

また、2017年にはSCADAにも参入。「SCADAは単なる表示機ではなく、IIoTのソフトウェアプラットフォーム。ラインの状況をタブレットで事故や故障のモニタリングを可能とするソリューションであったり、IIoTの機能は幅が広く、複数社でエコシステムを構築する場合、異なるレイヤを介するたびに実行時間のオーバータイムが発生する。これを1社が担うことで、細部まで手早く作り込むことができるようになる」との考えを披露。IIoTの進展にはMESとPLCの間にSCADAの存在が必要不可欠であることを強調した。

  • IIoTでSCADAが必要とされる理由

    IIoTでSCADAが必要とされる理由。MESではリアルタイムデータを扱えないという欠点があり、PLCでは大規模のデータを一括して処理することが出来ないという欠点がある。だからこそ、その中間に位置するSCADAの存在が重要になる

3つ目は、ロボット分野への参入。「ロボットにはIIoTと画像処理技術が貢献できる部分が多いことから参入を決定した」と同氏は参入理由を説明。このタイミングでの参入を決定した理由としては、画像処理のほか、ロボットアームの把持位置、軌道演算、衝突回避、キャリブレーションなどをすべてが1社で賄えるツールベンダが登場してきたことで、導入する顧客が採算性を取れるようになってきたためとしている。

  • ロボット導入のハードルを引き下げる

    3Dスキャナでの物体認識に加え、把持位置制御や軌道演算、衝突回避、キャリブレーションといったすべてを1社で賄うことで、導入における採算性のハードルを下げることが可能になるとする

未来を築く新サービスの実現に向けた取り組み

4つ目となるのが工場外でのロボットの活用に向けた取り組み。例えば物流では、箱に入っているさまざまなものを、それがなんであるかを気にすることなく、ベルトコンベアに流すといったニーズがあるほか、海外メーカーを中心に、ホテルでのデリバリなども可能とするロボットが登場してきており、こうした動きを受けて「これからの5年で、多くのサービスロボットが社会にでてくることが見込まれる」との見方を披露。多くの企業がAGVのような自動搬送に参入してきており、そこに着目した新製品の投入を2019年に計画しているとする。

そして5つ目がエンベデッドビジョンの工場外での活用への対応。これまでのコンピュータビジョンの処理は、PCクラスの処理能力が求められていたが、スマートフォンのSoCのパフォーマンスが向上。また、AI機能も搭載できるようになったことから、このSoC+AIの発展が進行しており、「画像処理が工場の外にものすごい勢いで出ていこうとしている」とのことで、工場の外でコンピュータビジョンを活用できるソリューションの提供を進めていく予定だとした。

  • エンベデッドビジョンの工場外での活用

    エンベデッドビジョンの活用が、スマートフォン向けSoCのパフォーマンスの向上により、工場外でも可能となってきたが、SoCやカメラの選定など、そうしたノウハウが必要であり、そこをリンクスでサポートしていく

このため、これからの同社はこれまでのマシンビジョンの工場での活用だけではなく、この5つのポートフォリオ構成で事業を進めていくとのことで、すでにそれに向けた動きも進んでいるとしていた。

  • リンクスの5つの事業ポートフォリオ

    リンクスの5つの事業ポートフォリオ。サービスロボットと円でベッドビジョンが新たな方向性となる