宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月8日、10月23日から25日にかけて行った3回目の小惑星リュウグウへのタッチダウンに向けたリハーサル(TD1-R3)の運用結果を公表。分離したターゲットマーカは、目標ポイントであるL08-Bの中心点から15.4mほど離れた場所に着地したことを確認したことを明らかにした。
TD1-R3は、搭載しているレーザーレンジファインダ(LRF)が計測した値を、実際にはやぶさ2の制御にフィードバックした際の精度などを検証するために行われたもの。条件が満たされれば、ターゲットマーカを分離、その後の追跡を実施するとしていたが、運用の結果、条件を満たしているとはやぶさ2が判断。搭載している5個のうち1個の分離が高度13m付近で行われた。
リュウグウ表面に降り立ったターゲットマーカは、太陽光に照らされ光っており、その光をはやぶさ2の光学航法カメラ(ONC-W1)などで確認することにも成功。また、はやぶさ2自らがフラッシュをたいてターゲットマーカを確認することも可能だが、こちらのデータについては、現在解析を進めている段階にあるという。
L08-Bそのものは直径20m(半径10m)ほどのエリアで、ターゲットマーカは、その円からわずか5mほどの外に落ちたことで、吉川真ミッションマネージャは、「L08-Bのエリア内に入れば完璧だったが、5m離れただけなので、十分にターゲットマーカを追跡しながら、タッチダウンができる可能性が残っている」と説明。ただし、実際にターゲットマーカを頼りにL08-Bにタッチダウンを行おうと思えば、カメラの撮像できる角度にも限界があるため、途中からターゲットマーカを追跡しないで降下を行う必要がでてくることもあり、「本当にそれで良いのかどうか、最終的な判断は、ターゲットマーカ周辺のボルダーの大きさや配置などを踏まえて判断する必要がある」と慎重な姿勢を崩さず、「新たなターゲットマーカーを落とさずに行う場合と、もう1回、別のターゲットマーカーを落としてからタッチダウンを行う場合の2つの選択肢がある」と再度のターゲットマーカの分離の可能性も示した。ちなみに、その場合、4回目のリハーサルを行うか、タッチダウン中に分離させるかについても、今後の検討結果次第だという。
はやぶさ2は、11月下旬から12月末まで、地球とリュウグウの間に太陽が入り込み、通信が難しくなることから「合運用(ごううんよう)」と呼ばれる期間に入り、クリティカルな運用は行われなくなる(通信自体は随時行っていく)。その際、はやぶさ2は、一度、リュウグウから100kmほど離れた地点まで距離をとることで、安全な飛行を維持するという。
なお、ターゲットマーカにはJAXAが2013年に実施した「星の王子さまに会いにいきませんかミリオンキャンペーン2」で登録された約18万3000名の応募者の名前が記載されたシートが入っている(5つのターゲットマーカすべての記載)。今回、無事に小惑星に送り届けたことを機にJAXAでは、自分の名前がターゲットマーカのどこに記載されているのかを知ることができる専用Webサイトを開設しており、登録IDもしくは登録した氏名で、それを知ることが可能となっている(2018年11月8日時点では、日本国内で登録されたもの=登録ID番号が付与されたもののみの対応となっている)。
このほか、高度40km付近から撮影したリュウグウの画像データから簡易形状の模型を作成できる3Dデータも公開されており、これを用いて3Dプリンタで出力したり、3次元表示ツールで閲覧することが誰でもできるようになるという。ただし、精密なデータではないため、科学や工学の目的には利用はできないとのことで、そちらについては関連論文が掲載された後に公開される予定だという。