すこぶる元気な中華ブランド(1) Shangling

ヘッドホン・イヤホンのイベントで回を追うたびに存在感を増しているのが中国メーカーの製品。日本企業へのOEMとして実績豊富なメーカーが自社ブランドを設立するケースもあれば、新規のベンチャー企業がいきなり海外展開を始めるケースもあります。特にOEMの経験があるメーカーは品質的に問題ないどころか、技術的にも最先端という場合がありますから、安くて高品質・高性能な中華デバイスは珍しくありません。むしろ、膨大な数がある中華デバイスの中からいち早く良品を見つけ出そうとする目利きのユーザが増えています。

SHANLING (シャンリン) は今年で創立30年を迎える中国・深センのオーディオメーカーで、豊富なOEM/ODM供給実績を持ちます。日本では今春発売された腕時計サイズの小型DAP「M0」がヒット中で、筆者も愛用しています。microSDカード上の音源を再生しヘッドホン出力する通常のDAPとしての機能はもちろん、Bluetoothでヘッドホンやイヤホンに飛ばすことができ、反対にスマートフォンで再生した音をBluetoothで入力する機能も備えます。しかも、入出力とも高音質コーデック「LDAC」と「aptX」に対応という充実ぶり。価格は15,000円前後とお手頃で、コストパフォーマンスは圧倒的です。

  • SHANLING初のイヤホン「ME100」

そのSHANLINGが初めて開発したイヤホンが、国内代理店の伊藤屋国際ブースに展示されていました。「ME100」と命名されたその製品は、ダブルマグネット・ダブルキャビティ構造に複合素材 (PU+PEEK) の振動板を用いた10mm径のダイナミックドライバーを搭載。ハウジングには高強度アルミニウム合金を採用し内部共振の低減を狙います。イヤホンケーブルは8芯高純度無酸素銅 (OFC) でMMCX端子を採用と、リケーブルを意識した設計です。これに高級感漂うレザーケースが付属して「販売価格は20,000円以下に抑えたい」(伊藤屋国際の担当者) とのことですから、このグレードのイヤホンとしては割安感があります。

早速試聴してみましたが、立ち上がり・立ち下りが迅速で、不自然な膨らみやモタつきがありません。音の輪郭は明瞭で、スネアのアタックも自然に収束します。ボーカルの帯域も描写が自然で解像感が高く、肉声に近いテクスチャを感じさせます。ブランド初のイヤホン製品とは思えない (OEMの経験があるかどうかは未確認) 完成度です。年末にかけて「M0」ともども中華デバイスにおける台風の目になること、間違いないでしょう。

  • 某スマートウォッチに少し似ている「M0」で試聴しました

  • 高級感漂う付属のレザーケースには、M0を格納できるスペースも確保されています

すこぶる元気な中華ブランド(2) Fiio

Fiio (フィーオ) は、日本では10年近く前から販売されているブランドなだけに、いま敢えて中華デバイスとして取り上げることに若干の違和感もありますが、最近の攻勢は目を見張るばかりです。そんなFiioの新製品「M9」が国内代理店・エミライのブースで展示中と聞き、試聴してきました。

  • Bluetooth/Wi-Fi対応のDAP「M9」

M9は6月に発売された「M7」にワイヤレス機能を加えた、コンパクトなDAPです。BluetoothのオーディオコーデックはSBC、AACのほかaptXとaptX HD、LDACをサポート。さらにHUAWEI (ファーウェイ) が推進している新しいハイレゾ級コーデック「HWA」(現在のところ市販の対応イヤホン/ヘッドホンはありません)にも対応という充実ぶりです。Wi-Fiもサポートしているので、DLNAを利用したネットワークプレイヤーとしても利用できます。

ハードウェアスペックもかなりのもので、基板を高密度な8層にすることで信号伝送を効率化 (M7は6層)、DACチップは旭化成エレクトロニクスの「AK4490EN」をデュアル構成で積み、さらにDSD再生用にFPGAも搭載しています。TI製オペアンプを採用するなどアナログ回路にも抜かりはありません。USB DACとしても利用でき、PCMは384kHz/32bit、DSDは5.6MHzまで再生できます。

同じくFiioのBA×3とDD×1というハイブリッドドライバ構成イヤホン「FH5」で試聴しましたが、まずS/Nの高さに驚きました。濃厚というよりはあっさりめ、モニター的というよりはリスニング的なテイストですが、解像度を感じさせつつも聴き疲れしないサウンドキャラクターには好感が持てます。ブースではmicroSDの音源で試聴しましたが、ネットワーク再生も試してみたいところです。

驚くべきはそのプライシングで、「実売価格は34,800円前後」(エミライ担当者)とのこと。USB DACとしてもネットワークプレイヤーとしても使えることを考慮すると、かなり魅力的ではないでしょうか。ブースにはバッテリー内蔵せず、USBバスパワー動作としたUSB DAC/ヘッドホンアンプ「K3」も展示されていて、こちらは「1万円台前半」とのこと。人気製品となること確実でしょう。

  • 3.5mm/シングルエンドと2.5mm/バランスという2系統の端子を備えています

  • USB-DAC/ヘッドホンアンプ「K3」。バランス出力にも対応しています