米国時間2018年10月17日にリリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド18262には、興味深い機能が新たに加わった。公式サイトの説明によれば、「3D Viewer(旧Mixed Realityビューアー)」「Grooveミュージック」「Sticky Notes」「カレンダー」「ペイント3D」「ボイスレコーダー」「メール」「映画&テレビ」「切り取り領域とスケッチ」「電卓」、以上の10アイテム(表記はビルド18262に準拠)がアンインストール可能になっている。

  • 阿久津良和のWindows Weekly Report

    Windows 10 バージョン1809における「メール」のコンテキストメニュー

  • 阿久津良和のWindows Weekly Report

    ビルド18262になると、コンテキスメニューに<アンインストール>が加わる

Windows 10 バージョン1809でも既に、「Microsoft Solitaire Collection」を筆頭に、「My Office」「OneNote」「Skype」「ヒント」「ペイント3D」「天気」の7アイテムがアンインストール可能。同一環境で確認したところ、コンテキストメニューに<アンインストール>が並んだことを確認できた。

  • 阿久津良和のWindows Weekly Report

    バージョン1809で確認したところ、同じく<アンインストール>並んでいた

OS上に並ぶアプリケーション(アプリ)は、ユーザーが取捨選択して然(しか)るべきもの。会社が指定する業務用アプリを除けば、どんなアプリをインストールするかは自由のはず。だが、Microsoftはその範囲を制限してきた。

ひとつの理由として考えつくのは、アプリ本体でもある実行プログラムと、機能を提供する共通ライブラリ(DLL)の存在だ。アプリAが使うDLLは、アプリBでも使われる場合が少なくない。このような依存関係において、アプリAをアンインストールすると、アプリBが動作しなくなる。

もちろん、各アプリが必要とするDLLとの相関図を整理すれば、対応は可能である。ただ、Win32時代はDLL Hell(地獄)との言葉があったとおり、DLLのバージョンよって特定の機能に依存したアプリが正常動作しなくなるケースが多発し、MicrosoftはSide-by-Sideアセンブリなど、いくつかの対策を用意してきた。アプリフレームワークについても、Win32から.NET Freamework、UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)と進化して、DLL Hellからの根本的な脱却にいたっている。

だがこれでは、Windows 10ファーストバージョンから「標準アプリのアンインストール機能」を実装しなかった理由を説明できない。筆者の愚見だが、Microsoftが自社製ツールを使ってほしいと思うのは当然だし、ユーザー側は自分の好きなツールを使いたい。そのせめぎ合いもあるのだろう。

例えば、Microsoft Edgeは他に引けを取らないWebブラウザーだが、利用者がアドオンを追加するなどして完成させているGoogle ChromeやMozilla Firefoxから移行するだけの魅力を欠いている。個人的にはMicrosoft Edge側の拡充を望みたいが、利用者の需要を無視することは難しいだろう。

以前、関係者にWindows 10の標準機能は、「帯に短したすきに長(なが)し」のようだと尋ねたところ、より優れたOEMベンダー製アプリケーションや、オンラインソフトの登場をうながしていると述べていた。時代は移り、現在はMicrosoftが率先して優れた標準アプリケーションを提供し、多くのファンを獲得し、市場を牽引(けんいん)すべきフェーズである。

  • 阿久津良和のWindows Weekly Report

    可能な限り標準アプリを削除し、スタートメニューにピン留めしてみた。ストレージ的には0.2GBほどの節約が可能だった

今回、標準アプリをアンインストール可能にしたことは、ユーザーの自由度を高めたよい判断ながら、市場に対する関与から少し引いたようにも見える。ただ、1人のWindows 10ユーザーとしては、今回の仕様変更を、よりよい作業環境を得られる第一歩として好意的にとらえたい。

阿久津良和(Cactus)