キヤノンから、光学40倍ズームレンズを搭載したコンパクトカメラ「PowerShot SX740 HS」が登場しました。2017年に発売した「PowerShot SX730 HS」の後継機にあたり、センサーやレンズを継承しながら撮影機能の強化を図っています。その写りや使い勝手はどうなのか。実写レビューをお伝えしましょう。

  • キヤノンが8月末に発売した高倍率ズームデジカメ「PowerShot SX740 HS」。実売価格は税込み5万円前後

凹凸の少ないスリム&軽量ボディは健在

最近のコンパクトカメラは、スマホカメラに勝る付加価値として高倍率ズームレンズを搭載したモデルが人気を集めています。なかでも、2014年発売の「PowerShot SX700 HS」から続くキヤノンの「SX700」番台のシリーズは、高倍率と携帯性をバランスよく両立させた製品としてヒットを続けています。

シリーズ共通の特徴は、他社のライバル機に勝るズーム倍率を備えつつ、EVF(電子ビューファインダー)や大型グリップは採用せず、持ち運びに有利な薄型ボディに仕上げたこと。今回紹介するシリーズ最新作のPowerShot SX740 HSもその製品コンセプトを受け継いでおり、高機能化しながらも、前モデルと同様の胸ポケットサイズを維持しています。

  • 金属を多用した高品位でコンパクトなPowerShot SX740 HSのボディ。グリップ部には、手触りのいいラバー素材が用いられています

外形寸法は、幅110.1×高さ63.8×奥行き39.9mm。重量は、前モデルからわずかに1g軽くなって299g。同じくEVF非搭載のライバル機であるニコンの「COOLPIX A900」に比べた場合、ズーム倍率で勝りつつも、奥行きと重量はぴったりと並んでいます。

デザインについては、前モデルのPowerShot SX730 HSとほとんど同じです。無駄のないシンプルな形状であり、しっかりとした剛性と高品位な質感も備えています。

  • 液晶は3型で視認性は良好。前モデルと同じくタッチパネルには非対応なのは少々残念です

  • 液晶は上方向に180度回転するチルト式。背景ぼかしや美肌効果を適用できる「自分撮りモード」を前モデルから継承しています

  • ズームのワイド端の状態

  • ズームのテレ端の状態。手ブレ補正は、従来より進化した補正機構「デュアルセンシングIS」を搭載しています

月のクローズアップも簡単に撮れる

レンズのスペックは、35mm判換算の焦点距離が24~960mm相当となる光学40倍ズームで、開放値はF3.3-6.9と標準的。最短の撮影距離はワイド端で1cm、テレ端で2m。電源を入れるとレンズ部がせり出し、約1.7秒ほどで撮影できる状態になります。

次の写真は、順に24mm(光学1倍)相当、480mm(光学20倍)相当、960mm(光学40倍)相当で撮影したもの。同じ場所で撮ったとは思えないくらい、広角から超望遠まで圧倒的な画角変化が味わえます。

  • 光学1倍(24mm相当)

  • 光学20倍(480mm相当)

  • 光学40倍(960mm相当)

さらに、デジタルズームを併用して撮影した写真が以下の2枚です。

  • 光学40倍×デジタル2倍=80倍相当(1,920mm相当)

  • 光学40倍×デジタル4倍=160倍相当(3,840mm相当)

2倍までのデジタルズームは「プログレッシブファインズーム」と呼ばれ、比較的良好な解像感を保っています。デジタルズームが4倍になるとさすがに画質が荒れるため、用途はある程度限られます。しかし、肉眼ではまったく見えないものをここまで大きく写せることは驚異的です。

この高倍率は、夕陽や月などの撮影にも役立ちます。本格的な天体撮影というよりは、スナップ感覚で太陽や月のクローズアップを楽しめることが利点といえます。下の2枚はどちらも散歩の合間に手持ちで撮ったものです。

  • 光学40倍(960mm相当)

  • 光学40倍×デジタル2倍=80倍相当(1,920mm相当)