これからも変わり続けることを選んだCEATEC JAPAN

--なるほど。それでは、まだCEATEC JAPAN 2018も開催していないうちに聞くのも申し訳ないのですが、2019年以降はどうお考えですか?

鹿野氏:CEATEC JAPANの基本的なレイアウトはこの約20年の間、ほぼ変わっていません。ただ、2016年に、家電と電子部品の間の領域が生まれ、大きく3つに分かれました。このIoTソリューションを中心としたエリアと、トータルソリューションは、やがて市場性も相まって、融合していくことになると思います。

また、IoTタウンは主催者企画ですが、ここに参加した企業が、数年後に、通常の出展者になっていかなければいけないと思っています。それがIoTの醍醐味であり、ビジネスの可能性だと思っています。電子部品や半導体デバイスも同じような考えで、何年かかるかはちょっと分かりませんが、特別なエリアを作らなくても、デバイスがトータルソリューションを支えていることが誰にでも分かる時代になれれば、という思いがあります。

こうした考えの一方で、切り口として出来ていない取り組みがあります。地方です。確かに地方自治体に出展してもらったりしていますが、どうしても来場者や出展者の多くがCEATEC JAPANは東京の展示会と思っている。我々としても、これは本意ではありません。全国を回ってみると、札幌市、神戸市、広島市、福岡市など、スタートアップ企業に対して積極的な支援を行なったり、行政にビッグデータを活用したりする自治体がかなりある。そういう現実を、我々としても、もっと見せてもらいたいと思っているし、日本全体を代表してやる、といった取り組みをしていかなければいけないと感じています。

そうした流れとしては、展示会が開かれている数日間のためだけにブースを作る、というスタイルを超えていく方法がないかな、とも思っています。確かに、箱物としての展示会という側面を踏まえると、自治体がブースを構えて、何をマッチングさせるのか、という話は必ずでてきます。しかし、これは必ずしも良い状況とはいえないとも思っています。自分たちの町をどうしたいのか、という想いと、それを実現できるソリューションを持っている企業をつなげて、ベネフィットを生み出す。それを目指して、例えばCEATECという冠をつけて、自治体のバックアップなどを受ける形で町全体で実証実験をやってみる、とか、とにかく箱の中でしかできない、という発想を外したいのです。

これからのCEATEC JAPANは、年間を通して、メッセージを発信していきたいと思っています。必ずしも、展示会で何かをしなければいけない、というわけではないので、実は形にできていない夢はいっぱいあります。ただ、それを実現していくためには、内外ともに準備を進めていかなければいけない。実際に、今のポジションに就任して思うのは、変化を起こすには時間がかかる、ということです。今年(CEATEC JAPAN 2018)のことも考える必要がありつつ、その一方でそうした5~10年先のことも考える必要もあると感じています。

--今、5~10年先を見据えた取り組み、という話がでました。これまでの20年の歩みを踏まえて、そうした将来に向けた目標を実現するために必要なものは何になるでしょう?

鹿野氏:ぶれないことが重要だと思います。特に基本は絶対にぶれてはいけない。ぶれない基本に、これまで肉付けをしてきました。そうした取り組みの中からしか、この先がどうなっていくか、という話題はでてこないと思っています。

そうした意味では、20周年の節目となる2019年は、さらに変革を加速させる年になると思っています。

夢がなければ、人間、生きていけません。そういう夢をもった、未来の技術やビジョンを、みんなが持ち込むことができる場所にCEATEC JAPANをしていくことが、次の10年で目指すべきものだと思っています。

  • CEATEC体験

    今のCEATEC JAPANが重視するのが、この「CEATEC体験」。といっても、これが展示会に来なくては体験できない、というのでは意味がないという想いもこの背景には存在しており、その第一歩として、ここ数年、コンファレンスの拡充に注力してきた。これからは、展示会場、という場所そのものの制約を除いた活動も進めていきたいとしている

--ありがとうございました。

インタビューを終えて

2016年に始まった変革の意思は、この2年間のCEATEC JAPANの各出展者ブースの展示内容などを見るにつけ、浸透してきている印象を受けていたし、会場の雰囲気なども、非常になごやかかつ活気のあるものに変化したように感じられるようになってきた。

そうした過去2年間の変化を踏まえて今回、鹿野氏の話を聞いたわけだが、その言葉の端々からは、これまでの変革に対する確かな自信に裏付けられた力強さを感じることができた。また、新たな道が切り開けたが故に、その道の先に見えている理想の姿には、まだまだ遠いという話もあったように、これからやるべきことが数多くあることも明確になってきた、ということは、それをこなしていくことで、理想像に近づいていくことができる、という裏返しでもある。

一方で、近年、さまざまな企業や団体が主催するテクノロジー関連の展示会の多くが、IoTの旗の下、似たような取り組みを行い、特色が出しづらくなってきているのも事実。鹿野氏が、展示会という箱にとらわれない、という考えを示したのも、そうした社会の流れに合わせて、これからもCEATEC JAPANがCEATEC JAPANであるために、変化を継続していく必要性を感じたからであろう。そういう点では、CEATEC JAPANという存在そのものが変わってきているということは確かであろう。

2019年の20周年という節目を前に、新たなキービジュアルを掲げ、変革に対して加速をしていくことを明確化したそんなCEATEC JAPAN 2018は、2018年10月16日~19日にかけて、千葉県・幕張メッセにて開催される予定だ。なお、CEATEC JAPANは、あらかじめPCやスマホなどから入場登録をしておけば、当日入場券(一般1000円/学生500円)を購入することなく無料で入場できるので、同展示会に行ってみようと思う人は、事前登録を行っておくことをお薦めしておく。