8月にグーグルがデジタルホワイトボード「Jamboard」の国内発売を発表した。タッチに対応した大型のディスプレイで、オフィスの会議室などに置くことを想定した製品だ。
このデジタルホワイトボードは、教育市場では電子黒板とも呼ばれており、マイクロソフトなど多数の競合製品がひしめいている。日本では後発となるグーグルだが、その強みはどこにあるのだろうか。
ホワイトボードの課題を解決し、遠隔地とコラボ
働き方改革によるワークスタイルの多様化に伴い、課題として持ち上がってきたのが複数の拠点をまたぐコミュニケーションだ。地方の支社やサテライトオフィス、在宅勤務など、さまざまな拠点から会議に参加する場面が増えている。
だが、多拠点の会議でも「ホワイトボードを使い始めると、問題が起きる」とGoogle Cloud 日本代表の阿部伸一氏は指摘する。ホワイトボードを写真として共有するなどの手段はあるものの、微妙なタイムラグから距離感が生まれ、対等な議論が進まなくなるというわけだ。
そこでグーグルが開発したデジタルホワイトボードが「Jamboard」だ。2017年5月に米国で発売後、Dow JonesやNetflix、Whirlpool、Spotifyなどが続々と導入。世界展開において、日本は14カ国目の発売になるという。
本体は55インチのタッチ対応ディスプレイとなっており、素手による手書きや付属のペン、消しゴムを用いた操作にも対応する。壁掛け用マウントやオプションのスタンドで設置し、実際の導入作業も有償のサービスとして提供するという。
特徴は、グーグルが企業や教育機関に向けて提供するクラウドサービス「G Suite」との連携だ。Googleドキュメントやスプレッドシートの文書を呼び出せるのはもちろん、検索やGoogleマップといったサービスとも連携するという。
多拠点での利用時には、複数のJamboardを連携したコラボにも対応。スマホやタブレットのアプリを用いることで、Jamboardがない拠点や在宅勤務でもリアルタイムに内容を共有できる仕組みだ。
グーグルのクラウド連携や価格に強み
調査会社のリサーチステーションによれば、2018年時点でのデジタルホワイトボードや電子黒板の市場規模は世界で43億1000万ドル。2023年には51億3000万ドルにまで伸びる見通しだという。
日本市場では、グーグルの直接のライバルとしてはマイクロソフトが「Surface Hub」を投入しているほか、総合電機メーカー、黒板メーカーなどがさまざまな製品を展開している。
その中でグーグルは、Jamboardの強みとしてG Suiteとの連携や人工知能(AI)技術、価格を挙げている。
たとえば書き込みの内容はGoogleドライブに自動的に保存される。企業の会議室ではホワイトボードの消し忘れがセキュリティ上の問題になりがちだが、Jamboardならクラウドに保存し、会議を再開したいときには簡単に復元できるというわけだ。
また、グーグルが一般向けに提供するインターネットサービスとも連携できる。グーグル検索でヒットした画像の取り組みや、誰もが見慣れたGoogleマップの地図を貼り付けられるのは、グーグルならではの強みといえる。
グーグルのAI技術も活用されている。日本語に対応した文字認識機能では、ペンで手書きした文字を認識し、キーボードから入力したものと同じテキストとして扱える。手書き文字がテキストになれば検索にヒットするので、後から参照しやすい。
本体価格は64万円(税別)で、マイクロソフトの55型モデルが100万円を超えていることを考えれば大幅に安い。米国の4999ドルよりは高いものの、これは日本の商流を考慮したものだという。
国内では法人市場に強いNTTドコモやソフトバンクなど7社が販売パートナーとなっており、関連したサービスやソリューションとのセット導入で値引きを期待できそうだ。
(山口健太)