最新の高機能エアコンは非常に「賢い」のが特徴です。8月28日に発表された日立ジョンソンコントロールズ空調(以下、日立)のルームエアコン「白くまくん」のフラッグシップモデル「プレミアムX」シリーズも、もちろん賢く高機能。赤外線や画像カメラ、温度湿度カメラなど、複数のカメラで複合的にセンシングする「くらしカメラAI」で人を識別したり、床の材質などの環境をチェックしたりして、最適な気流制御をします。

ただし、今回発表された新モデル「プレミアムX」の注目ポイントは、高度なセンシングや気流制御ではありません。日立によると、白くまくんシリーズの高機能モデルが「室内を快適」にするのはあたりまえ。新モデル最大の特徴はズバリ、掃除の「自動化」。とくに新モデルはエアコン内部、熱交換器のさらに奥にあるファンまで掃除する「凍結洗浄 ファンロボ」機能が特徴です。

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    エアコンの「清掃性」にこだわった日立のルームエアコン「白くまくん」の「プレミアムX」シリーズ

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    1枚目の写真で白くまくんのインパクトが強すぎたので、「プレミアムX」の単体

家族の健康にも直結するエアコンの掃除問題

夏は冷房、冬は暖房、このほか梅雨の部屋干し時に除湿運転をするなど、エアコンは非常に使用頻度の高い家電です。ただし、よく利用するだけに内部に汚れが溜まりやすい問題もあります。ホコリだけならいいのですが、運転中のエアコン内は湿度が高まるため、カビが発生しやすいのも特徴。エアコン内部にカビが発生すると、エアコンから吹き出す風が臭くなるほか、カビ胞子を部屋にまき散らすことになり、健康にもよくありません。

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    会場に展示されていた「10年使用したエアコン」の内部。いたるところにホコリや黒いカビが発生しているのがわかります。アレルギー症の筆者が近づくと、くしゃみがとまりませんでした

このため2018年現在、各メーカーのエアコン高機能モデルには、エアコン内部の「自動お掃除機能」が搭載されています。とはいえ、ほとんどの自動お掃除機能は、空気を吸い込むフィルターを掃除するだけ。フィルターはたしかに汚れやすいパーツですが、これだけではエアコン内部における「風が通る」パーツすべてを掃除することはできません。

そこで日立は2006年から「ステンレス・クリーン システム」を採用。これは、エアコンで風が通るエリアの素材をステンレスにするというもの。日立によると、ステンレスはホコリが付着しにくいほか、ステンレスの金属イオンの力で菌の繁殖も抑制できるといいます。フィルターの自動掃除機能も搭載しました。

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    プレミアムXに搭載されているフィルターの自動お掃除機能。空気の取り込み口にあるフィルターを自動で掃除してくれます。フィルター自体も汚れにくいステンレス製です

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    風が通る部分はほとんどステンレスで覆われており、汚れが付着しにくく、菌の繁殖を抑制できるようになっています

ですがフィルター自動掃除機能やエアコン内の防汚コーティングなどは、他社のエアコンでも採用しているものです。日立のプレミアムXが特徴的なのは、昨年(2017年)から「熱交換器」まで自動洗浄する機能を搭載したこと。エアコン内部には空気を送り出す筒状の「ファン」のほか、空気を温めたり冷やしたりするための「熱交換器」と呼ばれるスダレ状のパーツが配置されています。

熱交換器では、スダレ状の細いスリットの間を空気が抜けていく構造で汚れが溜まりやすいのですが、熱交換器は複雑な形状をしているため、掃除を業者に頼む必要がありました。ところが、日立は独自の「凍結洗浄」機能で、この面倒な熱交換器の掃除を自動化。なんと、熱交換器を急速に冷却して大量の「霜」をつけ、霜を一気に溶かしたときに出る水の力で、熱交換器に付着したゴミを洗い流せるのです。汚れた水はドレンホースから室外に自動排出されるので、汚水やゴミを捨てる必要もありません。

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    プレミアムX内部のカットモデル。中央に風を起こす筒形のファン。ファンを囲むようにスダレ状の熱交換器が配置されているのがわかります。どちらも複雑な形状でゴミが入り込んだら布などでは落としにくそうなのがわかるでしょうか

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    凍結洗浄のデモンストレーションとして、に凍った状態で展示されていたプレミアムXの熱交換器。ビッシリと白い霜がついています。ここから一気に氷を溶かして、水の力で汚れを押し流します

ファンの汚れは自動掃除の「穴」だった

熱交換器の自動掃除まで対応した日立ですが、じつはエアコンにはもうひとつ汚れやすいパーツがあります。そう、風を起こすための「ファン」です。日立によると、エアコン運転時、ファンの羽根には常に風が流れているため、羽根部分には比較的ホコリがつきにくいのだそう。ただし、風を受ける羽根の先端部分は汚れが付着しやすいとのこと。また、羽根先端に少しでも汚れがつくと、その汚れが風の干渉を大きくし、「汚れが付着する速度」がどんどん加速するといいます。このため「羽根先端の汚れをこまめに掃除する」ことが重要なのです。

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    2年ほど使用して汚れたファン。ホコリなどの汚れは羽の先端に集中していることがわかります

今回発表されたプレミアムXは、「凍結洗浄 ファンロボ」を搭載しました。これは熱交換器とファンの間にある「可動ブラシ」が掃除のタイミングになると、回転するファンの先端部分にブラシをあててホコリを除去する機能です。ただし、このときファンが通常方向に回転すると、落とした汚れが送風口から部屋に吐き出されてしまうため、ファンは通常とは逆に回転します。ファンが逆回転すると、空気の流れが変わるため、ホコリはファンを覆うように配置されている熱交換器に付着。この状態で熱交換器を凍結させる「凍結洗浄」を行うことで、熱交換器の汚れとファンから取り除いたホコリの両方を水で洗い流します。

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    停止しているファンと「凍結洗浄 ファンロボ」の可動ブラシ。ブラシの毛が下方向に向いているのがわかります。掃除時以外はブラシはファンと接触していません

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    凍結洗浄 ファンロボが動作しているところ。ファンが逆回転し、ブラシがファンに向かって傾いています

ちなみに、ブラシが回転するファンに接触する時間は約5秒。この5秒で羽根を約60回ブラシで洗えるそう。また「凍結洗浄」を実施しているときは、ブラシの先端を熱交換器に触れさせ、ブラシの洗浄も同時に行います。

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    洗浄後は、ブラシの汚れも凍結洗浄で落とします。写真はブラシに黄色い汚れを付着させて、洗浄前と洗浄後を比較したところ。ブラシまでしっかりと洗浄されているのがわかります

一生掃除しなくていい! とは言わないけれど……

今回のプレミアムXは、ほとんどの内部パーツが自動掃除に対応。しかも嬉しいのは、リモコン操作なしですべての掃除を勝手にしてくれる点です。エアコンは手の届きにくい壁上部に設置されることが多いため、掃除の自動化は非常に嬉しいポイントだと感じます。

もちろん、プレミアムXの内部がまったく「汚れない」わけではないのです。たとえば風路に採用されているステンレスですが、「ホコリが付着しにくい」ものの、まったく付着しないわけではありません。

また、ファンの自動掃除が可能になりましたが、それはファン先端部だけの話。ファンの根本などは汚れが付着しにくいのですが、歳月を経るにつれて少しずつホコリなどが溜まっていきます。

日立によると、独自のステンレス・クリーン システムは、ホコリのつきにくさや除菌性能のおかげで、一般的な素材と比べて非常に汚れにくいのだそう。たとえば、今まで2年に1度は業者にエアコン掃除を頼んでいた家庭なら、もっと長い間隔でエアコンを放置できますね。また、プレミアムXは内部パーツほとんどをカバーする自動掃除機能とステンレス製風路により、一般的なエアコンよりもホコリやカビなどの問題が少ないという安心も大きいでしょう。

ちなみに熱交換器に汚れが付着すると、熱効率が悪くなるため冷房は冷えにくく、暖房は温まりにくくなります。このため、エアコンが汚れると室内の空気も汚れるだけではなく、省エネ性能が落ちて余計な電気代もかかります。

日立によると、凍結洗浄ファンロボ搭載のエアコンを5年相当運転すると、消費電量を従来モデルの4%ほどカットできるそう。エアコンをキレイに保つだけではなく、環境とお財布にも優しいなんて……とってもハピネスですね。

プレミアムXシリーズは、冷房能力別に2.2kWの「RAS-X22J」から9.0kWの「RAS-X90J2」まで、計11モデルを展開。価格はオープンで、推定市場価格は25万円前後(税別)から40万円前後(税別)です。発売は10月末を予定しています。

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    内部を清潔に保つことで省エネ性能もアップ。節電になります

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    会場には白くまくんの親子も! 自称インスタグラマーのマイナビニュース編集部員も、インスタ映えを狙ってパチリしましたが……