6月1日に選考結果が発表された「カメラグランプリ2018」で、ニコンのフルサイズデジタル一眼レフ「D850」とともにカメラ記者クラブ賞を獲得したのが、パナソニックのミラーレス一眼「LUMIX G9 PRO」(DC-G9)です。初代のマイクロフォーサーズ機「LUMIX G1」(DMC-G1)の血を受け継ぐGシリーズの最新モデルで、写真の撮影性能に磨きをかけたのが特徴。古くからミラーレス一眼ならではの撮影性能の高さに注目し、数々のカメラを使ってきた落合カメラマンにとっても、大いに気になる存在だったようです。

  • パナソニックの「LUMIX G9 PRO」を手にする落合カメラマン

あの「女流一眼隊」から早くも10年!

2018年は、ミラーレス10周年の年だ。初のミラーレス機「LUMIX G1」の登場が2008年。あれから10年。もう10年。10年というときの流れは、長いようで案外、短い。ああ、そうか。「女流一眼隊」のお姉様方に得も言われぬ恐怖心を抱いたのも10年前だったのか……。

  • 2008年9月に実施したパナソニック初のミラーレス一眼「LUMIX G1」の発表会で登場した“女流一眼隊”のみなさん。従来のデジタル一眼レフよりも小型軽量のミラーレス一眼の魅力を女性層にアピールするために結成された

アレはホントにコワかった(笑)。ミノルタX-7の宮崎美子に、オリンパスOM10の大場久美子に「前屈みの青春時代」を支えてもらった経験のある男にとって、G1のCMは真逆のベクトルを持つ刺激にあふれていたのだ。ワタシにもっと“Mっ気”が豊富だったら「ありゃタマらんCMだった」との思い出話に花が咲いたハズ。でも、現実には縮み上がりっぱなしだったのである。

ちなみに、女流一眼隊に喰われそうになっていたイケメン男子って、改めて見てみたら東出昌大クンだったのね。親友が部活やめたかと思ったら朝ドラに出て、そうこうしているうちに波瑠に浮気されて荒ぶり、今や詐欺集団の構成員。人をここまで変えちゃうなんて、やっぱ10年って長いわー(←現実とドラマを絶賛混同中)。

「写真を撮る道具」の立ち位置にこだわったG9 PRO

「G9 PRO」は相当に力の入ったモデルだ。「LUMIXのGシリーズ」は、今までもそのたびごとにもちろん本気だったとは思うのだけど、今回は本気の度合いが違うというか、ど真ん中を貫いている筋の太さが過去とは別物であるように感じられる。とりわけ「写真を撮る道具」にこだわっての徹底した作り込みがうれしい。なぜなら、現代の「GH」は、少なくとも写真愛好家にとっては立ち位置が不明瞭なモデルになっているから。そこを埋めるのに十分な意気込みをG9 PROには感じるのである。

  • パナソニックが「静止画のフラッグシップモデル」と位置づけるミラーレス一眼「LUMIX G9 PRO」。実売価格は、ボディ単体モデルが税込215,000円前後、レンズキットが税込295,000円前後

思えば、Gシリーズには紆余曲折があった……というか、シリーズとしてのコンセプトはブレまくりだったように思う。ワタシ個人としては、Gシリーズの「初心者にも寄り添うことのできる中級機」みたいなバランスがけっこう心地よく、「G5」をかなり気に入って使っていたし今も所有し続けているのだけど、ユーザーターゲットは女流一眼隊だったりママ・パパだったり……とフワフワ。ワタシみたいなおっさん向けでなかったのは確かなのだが、一般的にも今ひとつつかみどころのない存在に終始していたように思う。

  • 2012年9月に登場した「LUMIX DMC-G5」

そんなGシリーズに変化の兆しが見えたのは、ボディデザインをガラッと変えた「G7」から。このときから、狙いは「ホンモノ路線」(おっさん向け?)になっていたハズだ。でも、「G8」を含め「モノはよくできていたのにイマイチ浸透しきれなかった」というのが現実。「GHシリーズはほとんど動画機」などという誤解を受けている中、Gシリーズの存在感までもが薄いままというのはいかにも苦しい……。

そんな事情がG9 PROの開発に拍車をかけたのであろうことは想像に難くない。さらに、一眼レフが疲弊しているとも読み取れる今の情勢でもある。「10年の技術イノベーションを結集させた新製品」であると作り手が胸を張る「LUMIXの静止画フラッグシップモデル」がこのタイミングで生み出されたのは必然の結果だろう。この機を逃すわけにはいかなかったのだ。