ファッションEC業界に変革の波が押し寄せている。衣料品通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」運営のZOZO(旧スタートトゥデイ)が、着用すると全身の寸法が計測できる「ZOZOSUIT」の提供を開始し、ファッションECの弱みだった”サイズ問題”の解消を狙っている。また、ファッション関連品の出品が目立つフリマアプリのメルカリが東証マザーズ市場への上場を発表するなど、ECとファッションをとりまく話題は後をたたない。
そんな中、この業界のさらなる成長に寄与する新たなサービスが生まれている。シリコンバレー初のベンチャー企業、Original(オリジナル)が提供する2つのサービス「Bodygram」と「MeasureBot」だ。これらはZOZOSUITとは異なるアプローチによって、”サイズ問題”の解消を図るものとなっている。
本誌では、OriginalのJin Koh(ジン・コー)CEOへインタビュー。サービス開発の意図や、同社の日本における事業戦略などを聞いた。
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OriginalのJin Koh CEO。シリコンバレーで働くエンジニアの「服を買いに行くのが面倒くさい」という思いから生まれた、オンライン上でのシャツの注文・制作サービス「Original Stitch」を運営している。2018年5月より、スマートフォンで衣服の寸法を測定できるアプリ「MeasureBot」をリリース。また同年夏より、身長の入力と2枚の写真を撮るだけで正確な身体の採寸を実現する「Bodygram」のサービスをリリース予定
スマホ一台で完結。次世代の採寸でECをもっと便利に
ーーそれではよろしくお願いします。早速なのですが、まずはOriginalのサービス「Bodygram」と「MeasureBot」について教えてください
Jin Koh CEO(以下、Koh氏) : 「Bodygram」はスマートフォンで全面と側面から写真を撮るだけで、被写体の実寸を測定できる身体採寸アプリ。一方の「MeasureBot」は、衣服の写真を撮るだけでその寸法を測定できる採寸アプリです。すでにMeasureBotは今年(2018年)の5月にローンチ済みで、Bodygramも今夏のローンチを予定しています。
ーー身体の採寸を実現するBodygramの発表は今年(2018年)の5月。似たような機能をもつ「ZOZOSUIT」がリリースされたタイミングと近い日程であったように感じます。サービスの開発にあたってそこは何か、意識されている点があったのでしょうか?
Koh氏 : 特に意識はしておりませんでした。私たちは2015年から同サービス(Bodygram)の開発を開始しており、そのタイミングではZOZOSUITに関する発表もなされていませんでしたからね。
ーーでは、サービスが形になったタイミングが今になったと。ただ、近い期間で各社から「洋服のサイズの問題解決」にアプローチしたソリューションが出たのはなぜでしょう?
Koh氏 : それは、ファッションEC業界における消費者からのニーズがあったためです。
日本は先進国の中で、アパレル産業におけるEC化率が高くないという状況があります。どうして低いのか? というとそこには日本の文化が影響していると考えています。それは「返品をためらってしまう」という文化です。
アメリカは日本と違い、ファッションに限らず、商品の返品は日常茶飯事です。レシートと商品を持っていれば返品できるというのは当たり前なのですが、日本はそうではない。返品が明確に許されている場合においても、遠慮してしまいがちな人が多いです。
「返品できない」という心理がECでの購入をとどまらせてしまっている。その場合の一番のネックとなるのが、サイズといえるでしょう。
さらにいうと、スタイルの問題もあります。百貨店などの実店舗で洋服を購入する場合は、店員からのアドバイスもありますし、試着をして実際に自分のスタイルに合っている商品であるかどうかを確かめることが出来ます。
つまり今、ファッションEC業界においては、サイズが合うか? 自分のスタイルに合う商品かどうか? ということが正確にわからないということが問題となっているのです。
ーーつまり、それらの問題を解決するために今回発表された2つのサービスを開始するに至ったということでしょうか
Koh氏 : そうですね。それらの問題を解決することで、さらにECでの購入率を引き上げたい、という目的があります。著しい成長を続けているCtoCマーケットにおいて、「ファッション」は特に消費が多い分野です。
そこで今、「デザインはいいけど……」と購入をためらっている人でも、Bodygramで正確に体を採寸し、さらにMeasureBotで得た寸法の情報が記載された商品をECサイトに掲載することで、従来のような「せっかく買ったのにサイズが合わない」などといった問題を減らすことが出来る。このような仕組みを作ることで、今まで以上にCtoC間での取引が活発化すると思っています。