不測の事態も想定して徹底的に訓練
今回の記者会見での大きなトピックは、2017年10月から行ってきた「RIO」(Real-time Integrated Operation:実時間統合運用)訓練だろう。運用訓練としては、前回の記事でお伝えした「LSS」(Landing Site Selection:着陸点選定)訓練もあるが、RIOはタッチダウンなどクリティカルな運用のための訓練となる。
小惑星に接近する運用は、非常にクリティカル。判断や操作を間違えれば、探査機を失ってしまう恐れもある。そうならないように、事前にしっかり訓練し、運用スキルを上げておく必要がある。それがRIO訓練だ。
この訓練のために、新たに「はやぶさ2シミュレータ」を開発した。まず、探査機のエンジニアリングモデルなどを活用し、実機と電気的に同等の"模擬はやぶさ2"を用意。さらに、探査機との距離に起因する通信遅れを再現するため、運用端末との間に遅延装置も設置した。これで、よりリアルな運用訓練が可能となる。
本番さながらの大規模な24時間訓練は9回実施。小規模・中規模も加えると、合計23回のRIO訓練を行った。5月までに、さらに4回のRIO訓練を追加で行う。
はやぶさ初号機では、降下運用時に、さまざまなトラブルが起きた。ローバーの着陸失敗、想定外の不時着、RCSの燃料漏れ。タッチダウンに成功したのに、サンプル採取のための弾丸が発射されないというミスもあった。不測の事態への対応は非常に重要であり、RIO訓練でも、さまざまな非常事態が組み込まれたという。
タッチダウンの訓練は3回実施。津田雄一・はやぶさ2プロジェクトマネージャによる評価は「辛口」とのことだが、結果は2回成功で、残り1回もほぼ成功という結果だったそうだ。今の運用メンバーには、初号機を経験していない若手も多いが、こうした訓練を重ねることで、「自信に繋がった」(佐伯孝尚・はやぶさ2プロジェクトエンジニア)という。
運用気分を味わえる「はや2NOW」が公開
吉川真・はやぶさ2ミッションマネージャからは、アウトリーチ関連の取り組みについて、説明があった。
今回、インターネット上で公開されたのが、「はや2NOW」というWEBサイトだ。はやぶさ2の運用状況をリアルタイムで知ることができるというもので、画面上には、探査機の通信状況、地上局の状況、RCSの噴射秒数、広角カメラ(ONC-W)で見たリュウグウの大きさなど、各種データが表示されている。
6月5日以降、RCSによる接近を開始すれば、画面右上の秒数がどんどん増えていくだろう。そして小惑星に近づけば、最初は単なる"点"だった表示が、徐々に大きくなっていく様子が見えるはずだ。小惑星への到着という大イベントを楽しむために、ぜひ有効活用してもらいたい。
また、2016年2月から開催してきた定期イベント「はやぶさ2トークライブ」は、この4月に実施した第14回で一旦終了。しかし、小惑星到着後は、ミッションの状況に応じて「トークライブ・シーズン2」(仮称)の開催を検討しているとのこと。「どんどん情報を発信したい」(吉川氏)ということなので、こちらも楽しみなところだ。