組込市場のリーディングプレイヤーを目指して

ーーそれでは組み込み周辺の市場、例えばコミュニケーションなどの概況はどうでしょう?

コミュニケーション向けとしては2タイプある。RYZEN EmbeddedはCPU+GPUなので、シンクライアントなどネットワークアプリケーションに向いている。一方EPYC EmbeddedはCPUのみの構成なので、先述したとおりネットワークやストレージ、ワイヤレスインフラなどに適している。基本的にZenアーキテクチャはこうした用途に非常に向いており、現在、世界中の主要なネットワーク企業が興味を持ってくれている。

ーーネットワークインフラ市場でも近年、ArmベースのCPUにNFV用アクセラレータを搭載するなどの動きが高まっていますが、AMDとしてどう捉えていますか?

少なくともArmベースのプロセッサよりも演算性能は高いし、AMDとしてはネットワークの接続性を改善するための外部アクセラレータについて、例えばXilinxやMellanoxなどと共同で取り組んでいる。我々はあくまで純粋にコンピュートエンジンを提供する立場で、エコシステムパートナー全体で顧客に対してソリューションを提供するという形になる。この取り組みの1つがCCIXだ。我々はあくまでもCPU性能を高める方向に注力する。

ーーそのCCIXですが、すでにXilinxが対応FPGAをアナウンスし、CCIX対応のIPも用意されていますが、AMDは現時点では対応できた製品が発表されていない状況にあります

確かに現在はまだアナウンスしていない。ただAMDはCCIXのプロモーターの1社であることを考えれば、将来の製品がCCIXをサポートすることを期待してもらってよいだろう。時期的にもそれほど待たせることもないと思っている。

ーー組み込み向けGPUですが、APUではなくディスクリートのVega、特にRadeon Vega Mobileを組み込みに投入する予定はありますか?

基本的にはほとんどのGPU製品は組み込み分野でも適用することが可能だ。今のところ明確な予定は決まっていないが、投入することに何か制約があるわけでもない。

林田氏:時間的な差は若干ありますが、基本的にコンシューマ向けに投入した製品は、後追いの形で「Radeon Pro Graphics」として組み込み市場にも投入していきます。

我々は組み込みにおける注力市場、およびその市場におけるリーディングプレイヤーを定めている。そうした個々の分野のリーディングプレイヤーを押さえられれば、我々のシェアは必然的に伸びていくと考えている。

ーー最後に何か読者にメッセージがあればお願いします

AMDは引き続きテクノロジーのリーダーシップをとっていくことをコミットしている。そのためにも先端テクノロジに多大な投資を行っているほか、パートナーや顧客にすばらしい製品を提供することもコミットしているし、すばらしいサポートも世界中で提供することを目指している。AMDがこうしたコミットメントに沿って成長していき、顧客に対してより優れた製品を提供できることを大変に喜ばしく思う。実際、大変にファンタスティックな状況になっているよ(笑)。

インタビューを終えて

実はLongoria氏からは、現在開発中の、次の組み込み向け製品のプレビューなども教えていただいたのだが、このあたりについては、いずれ製品が実際に公表されてから改めて取り上げたいと思う。

今回の話を通して一番のインパクトは、やはりダイレクトサポートの部分だろう。これはx86で組み込みシステムを開発しているエンジニアにとっての悲願であり、日本におけるx86ベースの組み込みシステムでVIA TechnologyがIntel/AMDを押しのけてシェアを確実に増やしてきた大きな要因でもある。もちろんLongoria氏も言っている様に「なんでもかんでもダイレクトサポートという訳にはいかない」のは事実で、ある程度の出荷数量が見込める製品でないとこの恩恵は受けられないが、これはどこの半導体ベンダを使っても状況は似たようなものであり、その意味では大きな進歩というか飛躍に思える。

そろそろAMDは組み込みビジネスの仮想敵をIntelではなく、NXPやTIといった組み込み向けプロセッサを提供しているメーカーに切り替えてもいいのかもしれない、と思えた話の内容であった。