春の新生活シーズンが到来しました。真新しいスーツや学生服に身を包んだ新社会人や新入学生の姿を目にすると、「新生活の時期になったんだな」と実感します。

この時期、もう1つの風物詩ともいえるのが「定期券購入の長い行列」です。購入のピークにあたる3月の最終週~4月上旬にかけて、主要なターミナル駅の窓口には定期券の購入を希望する人が殺到し、駅舎から人がはみ出るほどの購入待ちの列ができることもあります。新社会人や新入学生にとっては、定期券購入のために会社に遅刻したり、定期券を買いそびれたりする場合もあるのがやっかいといえます。

しかし、そのゆゆしき光景も、今後急速に見られなくなっていくかもしれません。JR東日本がiPhoneのシェアの高さに目を付け、定期券売り場の混雑を緩和すべく「iPhoneのApple PayでSuica定期券を使おう」というキャンペーンを一部の主要駅で開始。会社帰りのビジネスパーソンが続々と押し寄せた特設コーナー「Apple Pay サポートデスク」の様子を取材しました。

  • JR東日本の乗者数ランキングでベスト20に入る田町駅と浜松町駅で、「iPhoneのApple PayでSuica定期券を使おう」というキャンペーンを実施している。iPhone Xを手に、Apple Pay+Suicaの便利さを訴求する田町駅助役の村上真一氏

定期券売り場に並ぶ苦労をなくしたい

今回、JR東日本がキャンペーンを実施していたのは、JR山手線と京浜東北線が停車する田町駅と、東京モノレールも停車する浜松町駅の2つ。いずれの駅も、周囲にはオフィスビルが建ち並び、朝から晩まで多くのビジネスパーソンが行き交うことで知られています。

駅構内の改札前に設けられた特設コーナーにはテーブルが用意され、興味を持った客に対して担当者がApple Payの説明をしたり、手持ちのカード型SuicaをiPhoneのApple Payに取り込む作業を一緒にやってくれます。通常、このような問い合わせはコールセンターが窓口となるため、担当者を前にして質問や実演が受けられる機会は貴重といえます。村上氏によると、今回のキャンペーンにあたって9割ほどの駅員がアップルの勉強会に参加し、iPhoneやApple Payのことについて専門的なレクチャーを受けたといいます。

  • 駅改札すぐの場所に設けられた特設コーナー「Apple Pay サポートデスク」。夕方17時前後の取材時、ほとんどのテーブルが埋まる盛況ぶりだった

  • ゆっくり腰を落ち着けたうえで、担当者から説明が聞ける

  • 手持ちのiPhoneを使ってApple PayやSuicaのセットアップもしてくれる

これほどのリソースを割いてまでキャンペーンを開催したのには、定期券購入者の列を少しでも減らしたい、というJR東日本の思いがあります。「新生活の時期は定期券を購入する人の長い列ができ、長時間お待たせすることになってしまう。iPhoneにApple PayのSuicaを導入すればiPhoneで定期券が購入でき、窓口に並ぶ必要がなくなる。iPhoneをお持ちでもSuicaが使えることをご存じない方は多いので、そのような方にApple PayとSuicaの便利さをご説明する場を設けた」(村上氏)と説明します。