セキュリティベンダー各社の2017年セキュリティレポートには、トピックスとして仮想通貨マイニングを狙うマルウェアの話題も多く登場しているが、英セキュリティベンダーのSophosのオウンドメディアNakede Securityにも関連するトピックスの寄稿も増えている。

ユーザーのCPUやGPUの力をかりることで仮想通貨運営のためのリソースを構築するマインニングだが北極圏に接するアイスランドでは、データセンターキャパシティや豊富な再生エネルギーを使いこれらの冷却が行える。ビットコインをはじめ仮想通貨のマインニングのためには最適な環境で、多くのデータセンターで仮想通貨マイニングが行われているが、昨年12月から今年の1月にかけて、4件600台の仮想通貨マイニング用サーバーが盗まれた事案を題材に、この古くて新しい仮想通貨の強奪方法を紹介している。AP通信によれば警察当局は当初この件を内密にして、犯罪者の追跡を試みており、組織化された犯罪であることを指摘している。またBill Gates氏がRadditに投稿した仮想通貨がテロや犯罪に多く利用される匿名性の問題点への言及を引いている。

また別の記事「Cryptomining isn’t going to make you rich」では、ニュースサイトSalonの合意に基づく仮想通貨CoinhiveのAuthedMine Monero (XMR)マイニングについての試みについてメディアサイトの広告収益の代替えとしては微々たるものしか得られないと指摘している。ある企業が1万1千台のドメインにブラウザで動作するCoinHiveを組み込んだところ3ヶ月で7.69ドルにしかならなかった例を示している。条件により異なるものの、パブリッシャーの収益確保という観点からは明らかに足りないものになる。

しかし、国境を越えて大量にばらまくマルウェアという形態で考えれば、割に合う状況が見える。個人情報や企業情報は、10年以上昔の愉快犯的なウイルスから見れば金銭への代替えや間接的な換金源にはなるが、それでもあくまで間接的なものだ。Webサイトに貼り付けたコードから同意無しでユーザーのリソースを奪える容易な実装は、簡単に1万1千台を超える資金源になることは事実であろう。ただ、価値の流通性が多くの経済活動を支えるという仮想通貨の試みを支える声が根強いのも事実だ。ITで生み出される価値はITの力で解決していくことも期待される。