数年前からMVNOの悲願のひとつとして語られてきたフルMVNOサービスだが、前述したように、現時点では価格・速度面でのメリットはほとんどない。一方で法人利用では、これまでのMVNOではできなかったような運用が可能になり、ビジネスチャンスが大きく広がっている。まずは法人向けから手堅くサービスを展開してきたのは正解だろう。

個人向けサービスについては、今年後半をめどにスタートする見込みだが、個人ユーザーにおいては音声需要が高いため、IIJmioでは従来通りDプラン、KプランとIプランを併売していくことになるという。とりあえずIIJのアンテナピクトを楽しみたい人はデータ通信専用プランを使うことになるだろう。

速度でも料金でもメリットが見えにくいフルMVNOだが、一般ユーザーにとってわかりやすいメリットとなるのは、自分でSIMを差し替えるスマートフォンやタブレットでの利用より、一般的な家電などが通信機能を備えたIoT化してからということになるだろう。こうした機器にIIJが用意したチップSIMが組み込まれ、機器の寿命にあたる年数ぶん、数年分の通信費があらかじめ機器代金に含まれた形で販売される、といったことになると予想される。

こうした契約にはすでにKindle(ドコモ回線を使用)などの前例もあるが、メーカー側はより柔軟な条件での契約が可能になる。SIMの交換すら発生しない目立たない使い方だが、フルMVNOのおかげで静かに生活が変わっていくことになるわけだ。家電メーカーやスタートアップの中には、すでに様々なアイデアを持ったところが多いはず。彼らの中からどのような製品や使い方が生まれてくるのか、非常に楽しみでもある。