2018年1月、HAKUTOに激震が走った。

Google Lunar XPRIZE(GLXP)において、HAKUTOはローバーをTeamIndusのランダーに相乗りする予定だったが、打ち上げがレースの期限に間に合わない可能性が浮上。その後、主催者であるXPRIZE財団から、レース期限の延長はしないという発表が行われたのだ。これで、GLXPは「勝者無し」という形で幕を閉じることが決まった。

参考:「HAKUTOのプレスリリース」

この間、一体何が起こっていたのか。HAKUTO内部の動き、そして今後の展望などについて、HAKUTO代表の袴田武史氏と、広報担当の秋元衆平氏に話を聞いた。

  • HAKUTO代表の袴田武史氏

    HAKUTO代表の袴田武史氏(右)と広報担当の秋元衆平氏(左)

延長を直訴したものの…

――TeamIndusの問題が表面化したとき、HAKUTO側ではどのような動きがあったのでしょうか。

袴田(以下、敬称略):我々が最初に事態を把握したのは、1月9日の午後でした。インド国内で出ていた記事を見つけたメンバーがいて、チーム内で情報が共有化。記事の内容は、TeamIndusが公式に発表したものではなく、内部リークのような感じでしたが、この内容が事実かどうか、すぐにTeamIndusに問い合わせました。

このとき、TeamIndusからは、「記事には事実と違う部分もあるが、期限内の打ち上げが難しくなったのは事実」との回答を得ることができました。その後、対応をチーム内で検討しましたが、やはりなるべく早く正確な情報を発信するべきだということになり、急遽11日に記者会見を開催しました。

参考:「月面探査に挑むHAKUTO、挑戦自体は継続も3月末までの打上げは困難に」


参考:「HAKUTOは月面に行けるのか? - Google Lunar XPRIZEの行方を考える」


――このような事態は想定していましたか?

袴田:急に話が出てきて慌てた部分はありましたが、以前から様々なケースのシミュレーションは行っていました。その中には、当然「打ち上げられない」というワーストケースも入っていて、決して想定外というわけではありませんでした。ただ、これはTeamIndus側の問題であって、我々にはどうしようもない。受け入れるしか無いのが現実です。

――その後、XPRIZE財団に期限の延長を要望したのですね。交渉の場ではどのようなやりとりがあったのでしょうか。

袴田:HAKUTOからは、私と秋元を含めた3名が渡米。XPRIZE財団を訪問したのは、現地時間22日のことです。私は交渉するつもりで行ったのですが、延長をしないというのはすでに決定していて、交渉の余地は全くありませんでした。これはスポンサーの意向もあるのでやむを得ません。

もう決定が覆らないことは分かりました。そうなると、レース後のことを考えなければなりません。財団には、「参加する価値のある新しいレースができるのであれば、我々にとっては望ましいシナリオだ」ということを伝え、その可能性について議論しました。

秋元(以下、敬称略):彼らもレースを主催して10年もやってきたので、思い入れがあるのでしょう。レースに参加していたチームを今後どうやってサポートするか、真剣に考えてくれていました。彼らからは、別の形で次のレースを開催したいという意思を強く感じました。