月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」(GLXP)に日本から唯一参加しているHAKUTOが苦境に立たされている。HAKUTOはインドのTeamIndusが開発したランダーに相乗りする形で月面を目指していたが、既報のように、打ち上げの調整が難航し、レースの期限である3月末までのミッション達成が困難であることが分かったのだ

  • HAKUTOのローバー「SORATO」

    HAKUTOのローバー「SORATO」が月面に降り立つ日はいつ?

期限までの打ち上げはほぼ絶望的

今回の問題について、まずは状況を簡単に整理してみよう。

HAKUTOが開発しているのは月面探査ローバーの「SORATO」のみ。自前のランダーは持っていないため、他チームのランダーに相乗りする必要がある。当初、HAKUTOは米国のAstroboticをパートナーに選んだが、同チームがGLXPからの撤退を決めたため、2016年末にTeamIndusへと変更していた。

HAKUTOが相乗り契約を締結しているのは、このTeamIndusが相手。ロケットとの契約については、TeamIndus側が行うことになっている。打ち上げにはインドのPSLVロケットが使われるが、TeamIndusが契約しているのはインド宇宙研究機関(ISRO)ではなく、プロバイダーのAntrix。今回、交渉が難航しているのは、この間ということになる。

先日のHAKUTOの会見では、この交渉内容について詳細は明らかにされなかったが、TeamIndusに関する海外の報道では、資金の不足と、開発の遅れが指摘されていた。資金の問題だけであれば、大富豪がポンと払って急遽解決する可能性も無くは無い。しかし開発の遅れは深刻だ。もし現時点で完成のめどが立っていないのであれば、かなり厳しい。

3月末までにミッションを達成するためには、遅くとも3月半ばまでに打ち上げる必要があると推測される。すると残りは2カ月しかない。筆者はインドの打ち上げ事情について詳しくないので分からないが、たとえば明日資金を用意できたとして、今からロケットの用意が間に合うのだろうか。もうタイムリミットは過ぎている可能性もある。

PSLVは昨年(2017年)8月に打ち上げを失敗しており、その影響もあるだろう。今月(2018年1月)12日に、再開第1号となる打ち上げに成功したのは朗報だが、おそらく打ち上げスケジュールは詰まっているはずだ。またISROは今年前半に、3機のGSLVロケットの打ち上げを予定している。PSLVとは別のロケットではあるが、影響はあるかもしれない。

HAKUTOの袴田武史代表は、会見で「断念」という言葉は使わなかったものの、以上のような状況を考えると、レース期限内でのミッション達成は、ほぼ不可能に近いだろう。