組込みシステム技術協会(JASA)は2月14日、「ETロボコン 2018」の開催概要を明らかにした。

  • 組み込みのソフトエンジニア育成を主眼として開催される「ETロボコン」が今年も開催される(画像は2017年大会の様子)

    組み込みのソフトエンジニア育成を主眼とした「ETロボコン」が今年も開催される(画像は2017年大会の様子)

「ETロボコン」は、組み込みシステムのソフトウェアエンジニア育成を目的として開催される、教育的志向の強いロボコン。全国12地区の大会を勝ち抜いたチームが、11月14日から開催される「組込み技術総合技術展 2018(ET 2018)」と併せて開催される「チャンピオンシップ大会」に参加する権利を得ることができる。

他のロボコンと比較した際の特色として、単にロボットの出来を競うだけでなく、開発に用いたモデルの優劣も審査の対象となるという点、そしてモデルの傾向や良いモデルベースの作り方などを、ワークショップを通じて学ぶことが可能になっている点が挙げられる。

開催年ごとにコースやレギュレーションの見直しが行われており、昨年は「ガレッジニア」という競技部門が新設されたことが大きなトピックとなった。

今年は昨年同様の部門構成となっており、参加者の技術向上の場となる「デベロッパー部門」(基礎学習向け「プライマリー・クラス」/技術応用の機会となる「アドバンスト・クラス」)、5~15年後に活躍するエンジニア育成を目指す「ガレッジニア部門」の2部門3クラス構成となっている。

  • 「ETロボコン 2018」の部門構成

    「ETロボコン 2018」の部門構成

優勝者はCES 2019にご招待

2017年に新設された「ガレッジニア部門」の名称は、ガレッジで新しいモノを作り出すエンジニアを育成する目的を表すために、ETロボコン運営側が作った造語。「デベロッパー部門」は参加者が設定された課題をいかに解決するかを競うが、ガレッジニア部門では仕様を細かく定めず、エンジニアの創作意欲に任せる部分が多い。

「センサとアクチュエータをひとつ以上使って、ソフトで制御すること」という以外に縛りはなく、運営側が提示する「個別テーマ」に沿ったものと、「オープン(自由テーマ)」によった制作とを選択できる。昨年からの変更点としては、10万円以内と設定された予算に対して「少なすぎる」という反応があったため、50万円以内と増額された。

共同企画委員長の小林靖英氏は、初回のガレッジニア部門について、「驚きをもたらすような作品が少なかった」と振り返った。そこで今年は「パッション」というフレーズを掲げ、人の心をわしづかみにするようなパフォーマンスに期待していると語った。

「ガレッジニア部門」で求める作品の好例として、日産自動車が展開しているテクノロジーを表現するためのプロモーション「ProPILOT Park RYOKAN」を挙げた。

  • 「ProPILOT Park RYOKAN」は、旅館のスリッパに日産の自動運転技術を「応用」し、脱ぎ散らかしても自動整列するようにした。「ガレッジニア部門」では、こうした「バカバカしいが、技術的な裏付けのある」作品を求めているという。

加えて、今大会の優勝者には、米国・ラスベガスで開催されるテクノロジー関連の見本市「CES 2019」へ招待すると発表された。「ソト」の面白いことを見聞きすることで、若者の情熱を高めたいという意図から設定されたものだという。

ロボットに一部仕様変更

今回、競技に用いられるロボット(走行体)のタイヤ部分に変更が加えられた。変更理由は、これまでの部品が廃盤になって手に入らなくなり、在庫もつきてしまったため。直径8cmから10cmの物に変わり、ゴム部分の凹凸は既存部品より大きい。

  • 新走行体(左)と旧走行体(右)。比較するとタイヤの存在感がかなり増しているのがわかる。
  • 新走行体(左)と旧走行体(右)。比較するとタイヤの存在感がかなり増しているのがわかる。
  • 新走行体(左)と旧走行体(右)。比較するとタイヤの存在感がかなり増しているのがわかる。

基本的に走行体は昨年以前の物を流用可能だが、特にプライマリー・クラスの競技で行う「立って走る制御」は、タイヤの変更の影響を大きく受けてしまい、去年までのライブラリではうまく扱えない。そのため、新しいタイヤに対応した倒立振子ライブラリがあらかじめ提供されるということだ。

また、アドバンスト・クラスで使われるHackEVには一部変更があり、伸びるしっぽのような部品が取り付けられた。本部技術委員長の江口亨氏は、「しっぽをつけた意味は、課題に取り組んでいればわかるはず」として、設置意図は現状秘密にしておくと語った。

  • プライマリー・クラスのコース

    プライマリー・クラスのコース

  • アドバンスト・クラスのコース

    アドバンスト・クラスのコース

そして、競技内容としては、プライマリー・クラスにおいては昨年まで階段だった部分がシーソーに変更。これは既存の障害物の復活版となる。また、アドバンスト・クラスには、新たな課題として「AIアンサーゲーム」が登場した。このゲームの詳細について、現状は秘密とのこと。ゲーム紹介の図は、競技内容の大きなヒントになっているという。また、昨年もあった「ブロック並べ」については、新要素としてWebカメラからの画像が利用可能となった。

  • 会見で披露されたコースの実物

    会見で披露されたコースの実物。今後調整を重ねて確定版に仕上げていく。

  • アドバンスト・クラスには「AIアンサー」という新ゲームが登場

    アドバンスト・クラスには「AIアンサー」という新ゲームが登場

なお、参加申し込みの受付期間は3月1日から4月5日(17時締め切り)。ETロボコン 2018のWebサイト上から申し込む。各地区大会ごとに受け入れ可能チーム数に制限が設けられており、全国合計で340チームが見込まれている。

  • 今年度の参加費

    今年度の参加費

参加費について、昨年同様、ガレッジニア部門はデベロッパー部門の半額に設定されている。ガレッジニア部門の参加チームは2017年実績が18チームとなっており、今年は30チームの参加を目指すとしている。

  • 各地区大会のスケジュール
  • 各地区大会のスケジュール
  • 各地区大会のスケジュール