ここからはファレルとローランドの対談という形でセッションは進められた。まず、ローランドから、なぜ、我々は創作活動に勤しむのかという質問が投げられた。

ファレル 誰もが創造するということは、人が前へと進むために必要な事柄であるからだと思います。音楽というのは決して廃れない、古くならない、そして自分にとってはとてもやりがいのあることであって、制作活動をして楽曲ができる、それがリスナーに届く、そういったことが他の皆にも影響を及ぼしているのではないかと。

ローランドは少し掘り下げたいと続け、クリエイティブな現場でさまざまな判断が下されるが、どういった、アングルでそれがなされるかと尋ねた。

ファレル アングルを探していく何かを目指していくのは、すべてフィーリングに起因すると考えています。それに何かを追加していくというプロセスを踏んでいくのですね。それで、追加した際、フィーリングが抑制されることもあるし、強化されることもあります。音楽はそういったフィーリングに根ざす面があると思いますね。

テクノロジーがアートに与える影響について話題が及ぶと……。

ファレル 音楽家によるのではないでしょうか。技術を取り入れるのに長けているのであれば、その先、無限に近い形でオプションが加わるでしょうし。それに対し、単にアイディアをシンプルな方法で表現する人もいると思います。いつも同じツールを使ってもいいでしょうし、そこから何か拡張したいということであれば拡張していけば良いだけの話ですよね。

振り返ってみて、今までで創作上、苦労したことは無かったのかと、ローランドが聞くと……。

ファレル 自分にとってのタフな瞬間はあったのかなあと思います。自分が愛してやまないことを追求できてきたことはこの上ない喜びだと感じます。好きなことを続けること自体が学びであるのに、世の中の人はそれを諦めて、弁護士になったり医者になることがすなわち成功だという言説に導かれていくのですが、そういうことではないと。好きなことを続けるのは我々の権利なのですから。

それでは、最高の瞬間が訪れたと感じた時は?という質問に切り替えると。

ファレル ROLIに加われたことですかね(笑)。音楽を創る人々の手伝いができるというのもこの上ない喜びです。

創作はある種の旅であるとも言えるが、その旅路を導いてくれる、突き動かしてくれるものは何なのかとローランドは続ける。

ファレル 音楽のスタイルもいろいろあって、その中での自分の基準、あるいはサウンドに対する期待値というのが、各々にあると思います。そうした状況下で「声なき声」が聞けるということ、先ほどのフィーリングと、作り出した曲の構成だとかコード感などの結果が合致した状態になった時に「やりがい」という感情が湧きがって来るのではないでしょうか。

ファレル自身はともかく、「声なき声」を聞き取ることができない人たちもいるはずだ。そういった人たちが「声なき声」をキャッチできないでいるのに、どんな理由が考えられるだろうか?

ファレル 必ず皆、持っているんです。でも、そこにアクセスできなかったり、そもそもアクセスしようとしない人もいるかもしれません。だけど、そういう「魂」は誰もが持っていると思いますよ。

そんな中でクリエイティビティがどんな意味を持っていたり、役割を果たしているかという質問には……。

ファレル 何かを表明すること、明らかにすることの衝動だと思います。

この返答にローランドは「哲学的になりましたねえ」と日本語でコメント。場内から哄笑が湧き上がったが、きわめて真面目に答えたようだった。ファレルはさらにこう続ける。

ファレル 世の中には無限にアイディアが存在していると分っています。でも、「まあいいや」とか「やっぱりいいかな」という風に、眠ったままになってしまうことがあって、ある日誰かが、突然それらを掘り起こすっていうことがあるんですよ。僕はそれが素晴らしいことだなって感じます。

ローランドはトークの最後に「まあいいや」ではなく、取り組んでいこうではないかと思うことが肝要だと説きつつ、ファレルに、そうあるにはどうしたらいいかと尋ねた。

ファレル オープンであることです。そして試すこと。試すためにはオープンでなければなりません。自身が閉じていたら、インスピレーションが飛び込んでくる余地はありません。皆が強い意志やモチベーションを持っているかというとそうではないので、そういう局面でできるアドバイスはありません、でも、心の中に何か見えるのであれば、必ずそれを何かの成果に結びつけることは可能だと思います。そこは個々によりますけど、「欲求」は教えられるものではないですからね。

これに対し、ローランドは「今日はご来場の皆さんがオープンな心で我々に耳を貸してくれた」と延べ、締めくくった。

最後は再びPARISIによるパフォーマンス。先頃発表されたグラミー賞で二冠に輝き、4月は来日公演が予定されている有名シンガーソングライターの楽曲のボーカルパートだけを抜き出し、リアルタイムリミックスともいうべき演奏が披露された。

  • Lightpad Block M

  • Lightpad Block

  • Live Block

  • Loop Block

  • Touch Block

  • Seaboard Block

ROLIの製品はApple Store実店舗およびApple.comなどで購入できる。今回のパフォーマンスで使用された「Lightpad Block」は税別21,800円。「Live Block」「Loop Block」「Touch Block」はそれぞれ税別9,800円。「Seaboard Block」が税別35,800円。そして新発売の「Lightpad Block M」は税別23,800円となっている。