Apple 銀座で16日、「ミュージシャンのためのROLI BLOCKS」と題したイベントが開催された。「ROLI BLOCKS」は、英国のスタートアップ企業"ROLI"が開発した新世代の電子楽器だ。

「ROLI BLOCKS」は「Lightpad Block」というタッチセンサーを搭載したコントロールモジュール、調性やオクターブの切り替え、コードやアルペジオの演奏、音の長さなどを制御するモジュール「Live Block」、テンポの設定、ループの録音やクオンタイズなどの操作を司る「Loop Block」の3つで構成される。これらのモジュールを使って、iPhone/iPad用アプリ「NOISE」をコントロールし、音色の選択、エフェクトの追加、ループの記録と再生をして曲を組み上げていく。

グダグダ説明するより、ムービーをご覧いただいたほうが早いだろう。こちらだ。

BLOCKS: Shape Music

YouTubeでは他にもデモムービーがアップされてるので、あわせてご覧頂きたい

ROLIのSales Exective、Danny Singer氏

イベントはROLIのSales ExectiveであるDanny Singer氏の挨拶と、同社の沿革についての説明でスタート。これまでアコースティックな楽器でしかできなかった表現方法をデジタル楽器の世界に持ち込もうとし、最初に出来上がったのが「Seaboard」という鍵盤状のコントローラーだ。ピアノで用いられている鍵盤のような形状を採用してはいるものの、Seaboardは一枚のシリコンで出来ており、打鍵する以外のさまざまな入力方法を利用可能だ。例えば管楽器で、吹き方によってピッチが変わるといった表現ができる。Stevie WonderやNine Inch NailsのTrent Reznor、Chance The RapperにHudson Mohawke、Hans Zimmerら著名なミュージシャンが使用しているが、彼らはプロの音楽家のためだけに商品を製造しているのではなく、誰でも使える楽器を作るのをミッションとしているという。音楽は人生の幸せの一つだと考えており、また、それを万人に届けるのが自分たちの役割だという絵を思い描いているそうだ。そこで開発されたのが「ROLI BLOCKS」というわけだ。

デモ演奏を披露してくれたMarco Parisi氏(右)とJack Parisi氏による兄弟ユニット"PARISI"

デモ演奏では舞台やスタジオで最新テクノロジーを駆使して活動している兄弟ユニット、PARISIが登場。彼らはKendrick Lamarのプロダクションチーム、Digi+PhonicsのSoundwaveやPartyNextDoorなどとのコラボでも知られている。

Seaboard

最初に兄のMarco Parisi氏がSeaboardで演奏。Seaboardは、シリコンでできた表面を押す速さ、左右のスライド、上下のスライド、押し込む動作、離す動作の5つのジェスチャーに反応し、音楽を奏でる。デモでは、アコースティックベースやサックス、チェロなど様々なスタイルの表現を披露してくれた。とはいえ、Seaboardではある程度の鍵盤楽器の演奏能力が必要となる。ROLIは「誰でも使える楽器を」提供するのを目標としていると再度述べ、「ROLI BLOCKS」の紹介へ。

Lightpad BlockとLive Block、Loop Blockを接続したところ

Lightpad Blockは核となるデバイスで、モジュラーシステムを採用しており、本体に搭載されたマグネットで何台でも接続していくことができる。Bluetoothと磁気で繋がっており、ケーブルは使わない。単音、和音はもちろん、リズム楽器の演奏も行えるのが特徴だ。スケールに沿ったフレーズを演奏することもできるので、Kraftwerkではないが、ボタンを押せば音楽を奏でるようになっている。Marco氏がLightpad Blockを使い、チェロの音色でバッハの「G線上のアリア」を披露すると場内から拍手が湧き上がった。続けて、Live BlockとLoop Blockの機能を解説し、ドラム、ベース、リード楽器と、次々に音を重ねていく。

ここで、ドラムパートを打ち込む方法を紹介。進行は弟のJack Parisi氏に交代。ここでも5つのジェスチャーを使って、あたかもドラムを叩いているかのようなノリでパターンを組み上げていく。

ROLIのProduct Specialist Demonstrator、Ruben Dax氏

続いて、Product Specialist DemonstratorのRuben Dax氏にMCをバトンタッチ。ROLI BLOCKSの音源部分となるiOSアプリ「Noise」の解説へ。Noiseではリズム楽器、ベース、コード楽器、メロディ楽器が用意されており、Lightpad BlockとLive Block、Loop Blockからループを組んでいくことができる。アプリはROLI BLOCKSがなくてもiPhone/iPadだけでも楽しめる。ただし、iPadでは感圧タッチに対応しないので、押し込むというジェスチャーは使えない(iPhoneは3D Touch対応機で使用可)。アプリは無料でダウンロード可能だ。演奏の途中でメジャーからマイナーに調性を変えたり、スケールを変更するといったこともお手の物だ。特にスケールに関しては、普通は勉強して覚えていくものだが、Noiseでは勝手にリディアンだったらリディアン、イオニアンだったらイオニアンに変えてくれるので、アボイドノートを覚えるのが苦手という人にはとても重宝すると思う。また、noise.fmというSNS機能も備えており、そこではGRIMESやSteve Aoki、Wu-Tang ClanのRZAらがフィーチャーされ、オリジナルの音色などが発表される予定だという。

最後はDanny氏にマイクを戻し、ROLIの取り組みを改めて紹介。Danny氏は、この状況を、かつて暗室に入ってフィルムを現像し、プリントするといった作業を強いられていた写真の世界と比較して論ずる。iPhoneが出てきて、写真の扱いは手軽に簡便になっていったが、音楽の世界でも同じようなことが起こるだろうと彼らは予想している。また、誰でも音楽が楽しめるよう、教育方面の支援にも注力しているとのことだった。収益の1%をイースト・ロンドンのコミュニティに寄贈する基金を起ち上げているそうだ。

Apple 銀座の2階では大々的にフィーチャーされている。1階には試奏スペースも設置されていた

ROLI BLOCKSの取り扱いは、日本ではApple.comとApple Store実店舗のみ。Lightpad Blockは税別21,800円、Live BlockLoop Blockはともに税別9,800円となっている。Appleは現在、「技のある贈り物」と題した特設サイトを公開しているが、こちらのページによれば、12月22日の午後3時30分までに注文すると、クリスマスに間に合うとのことである(在庫のある商品に限る)。今年一年頑張った自分へ、音楽好きな友人や家族へのプレゼントとしてみてはいかがだろうか。