2017年はRadeon VEGAも投入して、これで形勢逆転……と思いきや、そこまでのインパクトはなかった。とは言え、Polarisに比べると性能は大きく改善しており、GeForce GTX 1080をキャッチアップできる程度には盛り返してきた(GeForce GTX 1080 Tiにはまだちょっと遠いが)。

  • さっきの逆

    逆パターン。しかも両脚揃えて蹴ってるし

そんなAMDだが、2018年はまずVega 11が投入される。実はこのVega 11という名前は、Raven Ridge(つまりRyzen Mobile)に統合されるGPU向けのコード名だという話もあったのだが、それとは別にDiscrete GPUやMobileに対応した製品も存在しており、こちらもVega 11扱いされているようだ。

このVega 11はいくつかSKUがあり、基本的にはPolarisベースのRadeon RX 500シリーズを置き換えることになる。実はこのVega 11、先にIntelのCore Hシリーズに出荷されることが発表されている。

HBM2を使う、という時点でPolaris世代ではないし、HBM2のダイ2つ分程度のサイズだからVega 10でもない。もちろんAMDがIntelというかAppleのために、専用チップを作ったという可能性も0ではないが、そのためのコストを考えると余程大量にCore Hを量産するのでない限り、まずありえない。

CU数は不明だが、Radeon Vega 32という製品名が聞こえてくるあたり、Vega 11の上のモデルは32CU、Core Hに搭載されているもの(Vega M)は16CU程度と考えられる。

32CUモデルはHBM2×2、Vega MはHBM×1という構成か、GDDR6を利用したものになる(恐らくメモリコントローラは両対応というか、両方のメモリコントローラが搭載されていると思われる)。ちなみにVega Mは、Vega 11の16CUモデルをモバイル向けに低消費電力動作にしたものだろう。

タイミング的に、このVega 11はGlobalfoundriesの12LPPに間に合わない。恐らくは14LPPを利用しての製造になるだろう。

Vega 20シリーズは細かなブラッシュアップに留まるが消費電力は削減

これに続くのが、Globalfoundriesの12LPPを利用したVega 20シリーズだ。こちらはMicroarchitectureそのものはVegaとほとんど変わらず、細かなブラッシュアップやちょっとした改良が加えられる程度である。

12LPPにすることでの改善点は明確にされていないが、それこそTSMCの16FFC→12FFCとそう大きくは変わらない。若干のダイサイズ縮小がある程度で、CU数を大きく増やすのは難しいだろう。

つまりCU数は最大でも64で据え置きになる。むしろ若干の動作速度向上と、消費電力削減の方に効果がありそうだ。Radeon Vega 64の場合、性能はともかくとして消費電力が異様に多いのが大きな弱点だった。この弱点の緩和には効果がありそうである。

幸いというべきかどうかはあれだが、当面NVIDIAもPascal Refreshで足踏みをしているわけで、GeForce GTX 1080グレード以下をターゲットに絞れば、12LPPの採用でだいぶ競争力は高まりそうである。

Naviは2019年までおあずけ

一方の7nmについては、MicroarchitectureがNAVIに切り替わることになる。NAVIはGlobalfoundriesの7LPを利用し、Risk Production開始が2018年前半という話だから、製品としてのNAVIが投入されるのは2019年までお預けになる。NVIDIAのAmpereに若干の遅れをとることになるが、こればっかりはFoundry側の事情だから如何ともしがたいだろう。

1つ明るい話があって、Globalfoundriesでは7LP(正確に言えば7LPを利用するFX-7というASICプラットフォーム)で700平方mmを超えるダイも製造できるとアナウンスしている。

つまるところ、CU数を増やせば性能は上げやすいが、これはダイサイズが自動的に増えることになる。14LPPを利用したVega 10は486平方mmだが、これは14LPPとしては最大級の大きさだったらしい。

ところがNAVIの7LPだとおよそトランジスタ密度を倍にできるし、ダイサイズも(コストを度外視すれば)さらに増やせるわけで、可能性としては3倍近くまでCU数を増やせる計算だ。

もっともAMDがそういう方向でチャレンジをするのか? はちょっと謎である。むしろEPYCとかThreadRipperの様に、複数ダイをMCM構造で繋ぐほうが自然な感じはする。まだNAVIの詳細は明らかになっていないが、これは2018年中に何かしらのアナウンスがあると思われる。

問題はNaviの次 - GPUアーキテクトはどうなる

AMDの懸念事項としては、NAVIの次であろうか? ロードマップ(Photo57)は、NAVIの次は7nm+、つまりGlobalfoundriesのEUVを使ったシリーズが投入されることになるが、ここがどうなるかだ。

  • 2017年時点でのGPUロードマップ

    これは2017年末におけるもの。恐らく新年早々に更新されると思われる

というのは、AMDでRadeon Technologies Groupのトップ兼GPUのアーキテクトとしてPolaris→Vega→NAVI(これは恐らく論理設計は終わっており、Tape Inしている段階と思われる)の開発の指揮を執っていたRaja Koduri氏が2017年11月にIntelに移籍してしまったからだ。

順当に行けば、NAVIの次のNext Genの論理設計の真っ最中で、さらにその次の世代のアーキテクチャ決定などを彼が行っているはずだったのだが、現在AMD内で誰がそうした役目を担っているのか(or担える人を探しているのか)はいまのところはっきりしない。このあたりの体制がどうなっているのかがちょっと不安なところである。