毎年恒例の「PCテクノロジートレンド」。今回はIntelとAMD、それぞれのCPUについて2018年の動向を紹介する。

2017年はIntelにとっても怒涛の年であった。ざっと振り返ってみると、新年早々にKabyLakeベースの第7世代Core iシリーズを発表。続く5月にはXeon Scalableシリーズをアナウンスすると、COMPUTEXのタイミングでCore-Xシリーズを発表、7月に出荷を開始した。

9月にはCoffee Lakeベースの第8世代Core iシリーズも発表。10月にはCore Xシリーズの14~18コア製品も販売した。11月にはCoffee Lakeベースの製品も発売したという具合だ。 1年で2世代分の製品をリリースしており、Intelの中の人にとってもさぞ忙しかっただろうと思われる。

2018年はどうか? というと、これはIntelの10nmがまともに立ち上がるかどうかに掛かっている。逆に言えば、10nmが安定して出荷できない限り、何も出てこないということだ。以下に筆者の予測を述べるが、これはあくまで10nm世代が安定しているという前提に立ったものである。

  • まめっち先生

    まめっち先生。大体こういうポーズは「おやつ寄越せ」

デスクトップ向けはCoffee Lakeで「頑張る」

デスクトップ向けは、Coffee Lakeで2018年を頑張らなければならない。これは10nmプロセスが、ノートPCとサーバー向けに優先的に使われるからである。なぜサーバー向けにという話は後述する。

ちなみにCoffee Lakeだが、元旦に掲載したプロセスの解説で説明した通り、筆者は現状のCoffee Lakeは14nm++ではないという疑念を持っているが、どこかで入れ替えが発生する可能性はある。万が一10nmがさらに遅れるようなことがあった場合の中継ぎ(つまりCoffee Lake Refresh!)用にリザーブするという可能性もある。

いまのところハイエンドのラインナップに大きな変更はないが、2018年第1四半期のどこかで、H370/H310/Q370/Q360/B360といったメインストリーム~バリュー向けのチップセットを追加される見込みで、これに向けてむしろミドルレンジ以下とPentium Gold/Celeronを追加するといったことだろうか?

もっともこれは競合の出方を見てという部分はある。この場合、競合となるのは現行のRyzenではなく、次のZen+コアを利用した製品(開発コード名"Pinnacle Ridge")だ。これの動向次第で、動作周波数に若干の上乗せ、もしくは価格を下げるといった対策を打つのだろう。

Cannon Lakeの量産は早くて第3四半期

次がノートPC向けだが、10nmで製造されるCannon Lakeの量産出荷は、早くて2018年の第3四半期になると思われる。かつてのBroadwell-Yの様に、極めて少量を比較的早期(例えばまもなく開催されるCES)でOEMパートナーに流す可能性はあるが、これはアリバイ工作以外の何者でもない。

つまり2018年の春・夏商戦に出すべき弾がないということになる。悪いことにAMDはRyzen mobile(開発コード名"Raven Ridge")を投入するわけで、これへの対抗が難しくなる。とりあえず2017年第3四半期にはKaby Lakeベースの4コア製品を投入し始めたが、これに加えて2018年は"Whiskey Lake"なる製品も予定されているようだが、Coffee Lakeベースの6コア製品なるのかどうか。

もちろん、ノートPC向けプロセッサの消費電力枠は15Wなので、相当動作周波数を落とすことになり、Single Thread性能はむしろ落ちると思われるが、Ryzen mobileが最大でも4core/8Threadなので、6core/12Thread製品を投入することで差別化ができるということかもしれない。

「順調に行けば」2018年第3四半期にはCannon Lakeが投入されるし、次のIce Lakeも控えているわけで、ここからは急速に競争力を回復できる「はずである」。

Vega統合の新製品はApple向け

ちなみに2017年11月には、新たな製品シリーズが発表された。これはKaby LakeベースのCPUコアと、Vega M+HBM2メモリをEMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)に乗せ、間をPCI Expressでつなぐという製品で、公式には表明されていないが、基本的にはApple向けという位置付けだろう。

というか、AMDのGPUを選択するというあたり、明確にAppleのリクエストによるところが大きいということを示している。Intelとしては不本意ではあろうが、GPU性能はAMDに遠く及ばないだけに、これを受け入れた形になったと思われる。

どこぞで「打倒NVIDIAのためにIntelとAMDが手を組んだ」とか書かれていたが、そういう話ではないと思う。この原稿執筆時点ではまだark.intel.comには掲載されていないが、2018年第1四半期中にはアナウンスされると予想している。

ただIntelがどこまでこのシリーズに取り組むのか現時点では未知数である。ノートやSFF向けだけでなく、TDP100Wクラスの製品まで展開する、という予測も聞こえてくるが、筆者はノートPCやSFF向けにのみの展開に留まると考えている。SKUも非常に限られ、かつ結構高価になるだろう。

Vega MコアもさることながらHBM2(容量は4GBになる模様)を積んでいる時点で安くなりようがないし、パッケージに載らないから、HBM2をGDDR5に変えるのは不可能だ。SKUを増やす意味もほとんどない。真偽は不明だが提供期間も2年程度という話も聞こえており、これでRaven Ridgeで戦うつもりはないと思われる。