台湾の市場動向調査企業TrendForceは12月21日、中国半導体産業の分析レポートを発行し、その中で、中国政府は、今までのように半導体チップの多くを海外からの輸入に依存するのは、国家安全保安上問題だとして、国策で半導体、とりわけメモリの国産化に乗りだしていると報じ、政府からの資金援助を背景に半導体メーカーが続々と誕生しており、その代表格が「Fujian Jin Hua Integrated Circuit(JHICC:福建省晋華集成電路)」、「Innotron Memory(睿力集成電路)」および「Tsinghua Unigroup(清華紫光集団)」の3社であると指摘した。
中国半導体企業の多くは、これまで海外からの半導体メモリ生産技術の獲得に苦戦してきた。習近平 国家主席が卒業した名門清華(Tsinghua)大学傘下の国営ハイテク投資集団Tsinghua Unigroupは、米オバマ政権時代にMicron Technologyを買収しようとしたが、米国政府の介入で失敗に終わった。変わったトランプ政権下では、より厳しくなり米国からの先端技術導入はもはや絶望的ともいえる状況となった。そこで中国勢は、世界中から半導体技術者を一本釣りでリクルートしており、特に台湾、韓国、日本の技術者が多く採用されている。海外から知財権を獲得しようという以前の方針をあきらめて国内で技術開発し、メモリを生産するようである。このため、量産立ち上げに時間を要するのではないかとの見方が有力である。
DRAM分野で、中国は明確な目標を定め、散在していた資源を結集する戦略を取ろうとしている。技術的な観点から、中国のメモリサプライヤは、グラフィックスDRAMを除くすべてのDRAM分野の基礎を築きつつある。
中国の2大DRAMメーカーとして知られるJHICCとInnotronだが、JHICCは主に、民生用電子機器の市場における特殊DRAMに重点を置いている。そのため、国内消費が大きく、生産能力の拡大が見込まれるほか、政府の助成を受けて、早ければ2018年末にも国際市場に参入するための特許を取得する可能性もある。
JHICCが主流のアプリケーションで主要な海外メモリサプライヤとの競争を避ける一方、Innotronは海外メモリメーカーも注力するモバイルDRAMに注力している。モバイルDRAMは現在、すべてのメモリ製品の中でも引き合いがあるが、消費電力削減の厳しい要求があるため、製造上の技術的障壁は高い。しかし、中国のブランドが世界のスマートフォンの出荷台数の40%以上を占めていることから、LPDDR4が政府補助金や支援政策のもとで大量生産に成功すれば、中国政府はメモリ輸入品への依存度を下げることができるかもしれない。
YMTCのNANDは国内市場に焦点
NAND型フラッシュメモリ分野では、Tsinghua Unigroupの子会社であるYMTC(長江ストレージ)が中国の国内半導体業界をリードしている。開発の初期段階で国内市場に着目し、メモリカードやUSBメモリなどのローエンド製品は、他の既存のグローバルサプライヤと競合していないため、これらの開発から手を付ける予定である。同社は、3D NAND製造レベル技術が64/96層に達するまでは、SSD市場に参入しない見通しだ。しかし、SSD市場は国際的な競争が激しいため、政府の支援なしにコスト競争力を得ることは容易ではない。したがって、国際競争は避けて中国の巨大な国内市場をターゲットとしてビジネス展開することは、Tsinghua Unigroupが成長するために必要な戦略になるだろう。
Tsinghua UnigroupがYMTCを設立した後、傘下でNAND開発を担当してXMCはその焦点をNOR製造に移している。NANDの試作ラインは現在XMC内にあるが、YMTCがWuhan Donghu New Technology Development Zone(武漢東部新技術開発地区)に新しいファブを建設した後は、NORはXMCが、NANDはYMTCがそれぞれ担当する役割分担が明確化するだろう。
なお、TrendForceは、この3〜5年が中国がメモリ製造の開発戦略が機能するかどうかを判断する重要な時期になると指摘している。知的財産を獲得できるかどうかは特に重要である。既存のグローバルチップメーカーと競争するためには、中国政府と半導体メーカーは巨大な国内市場の利点を活かし、製品開発力と生産能力を絶えず強化する必要があるという。