IoT時代のカギは、エッジにありーー。IoT事業に力を入れる各社の会見では最近、よくこのような言葉を聞く。これはつまり、かつてクラウド側に求められていた知能化技術は、デバイス側にも求められるようになったことを意味する。近い将来、数百億ものデバイスがインターネットに接続されるようになるといわれており、ただ単にデバイスで得たデータをクラウドに送り、処理をするのでは、データ保管場所の不足や、遅延時間(レーテンシ)が問題となるためだ。

  • IoT時代のデータ処理技術のトレンドは、クラウド側からデバイス側へと遷移している

このような状況を背景に、12月15日に行われたクアルコムのIoT事業戦略会において、同社のシニアバイスプレジデントであるRaji Talluri(ラジ・タルーリ)氏は、「モバイル分野で培った技術が活きている」と同社製品の優位性を語った。

「例えば、自動運転の分野において、車が得た情報を瞬時に処理し、ドライバーを適切にアシストするためには、レーテンシの問題から、クラウド側でなく、デバイス側でのデータ処理が求められる」と同氏。2016年10月のNXP Semiconductors買収に見られるように、車載半導体は同社の注力分野の1つとなっており、今後も自動運転分野の強化を図っていくという。

  • 自動運転において、ドライバーのアシストシステムが迅速な判断を下すためには、レーテンシの問題から、クラウドではなく車側でのデータ処理が必要不可欠だ

またさまざまなものがインターネットにつながるという面においては、スマートホームも同様だ。ここでは、レーテンシの問題よりも、接続性(コネクティビティ)の問題が生じる。ラジ氏は「ユーザーは、商品を一度にすべて購入して終わりということはない。さまざまなタイミングで商品を買い、それらを容易に接続する必要がある。そのためにも、デバイスの標準化が必要となり、各種メーカーは、ユーザーによりよい消費体験を提供するために、当社製品を利用するというパターンが増えてきている」と語る。

  • 家電同士をつなげるスマートホームの分野において、昨今の「Amazon Alexa」や「Google Home」などのスマートスピーカーの登場により、家庭内のエコシステムが整いつつある中で、コネクティビティを高めるためにも、デバイスの標準化が求められている

さらにこういったトレンドは、IIoT(産業用IoT)の分野でも同様であるという。「レーテンシやコネクティビティはもちろんのこと、生産性を大幅に低下させるマシンダウンなどの問題を解決するために、マシンダウンを予測する技術が求められる。問題が生じることを予測し、適切なタイミングでメンテナンスをかけることで生産性の向上が実現できる」とつなげる。

  • IIoT分野においては、マシンダウンを予見し、適切なタイミングでのメンテナンスが重要となる

しかし、エッジ側での処理能力やコネクティビティなどの多くの技術が求められるようになると生じるのが、消費電力の問題だ。負荷の高い処理ほど、その消費電力は大きくなってしまうほか、直接電源につなぐことのできないデバイスは、電池で長時間の駆動を実現する必要がある。そこで活きてくるのが、「モバイルの分野で培った技術」なのだという。「デバイスで高いインテリジェンスを機能させるために重要なのは、電池、メモリ容量といった技術。これらの課題は、当社がモバイルの分野において取り組んできた問題そのものだ」。

ラジ氏は「今後、モバイルの分野で培ってきた技術を活用し、IoT分野での技術革新を進めていきたい」と述べ、「これまで、日本の企業と連携をしてきた。今後も多くの技術革新がこの国から生まれていると考えている」とし、今後の期待を述べた。

  • クアルコムのSoCであるSnapdragonはaiboにも搭載されている。今後もさらなるIoT製品へ展開していくことだろう