次世代通信技術「5G」は、私たちの生活にどのような変化をもたらすのでしょうか? NTTドコモが日本科学未来館で開催したイベント「見えてきた、"ちょっと先"の未来 ~5Gが創る未来のライフスタイル~」は、5Gの特徴である高速・大容量・低遅延のモバイルネットワークを活用した、ユニークな展示にあふれていました。

東京都江東区の日本科学未来館にて

夢を積み込んだ未来のクルマ

ソニーによる「ニューコンセプトカート」は、遊び心にあふれたクルマでした。まず、前方と後方には窓がありません。その代わりに、4K超高感度カメラセンサーがとらえる車外の360度ビュー映像を、ソニーの4Kテレビ「BRAVIA」を通じて見ることができます。さらに、ハンドルもアクセルもブレーキもなく、(PlayStationを思わせる)ゲームコントローラーで運転が可能となっています。

ソニーが開発中のニューコンセプトカート。前方から見ても後方から見ても、デジタルサイネージが目立ちます。ヤマハ発動機のモーター駆動車体を使っているそうです

窓を廃止してディスプレイにした利点は、いくつか挙げられます。前後左右の様子を1画面で確認できるので、ドライバーは視線移動だけで済みます。また、Pokemon GOでおなじみとなったAR技術を応用し、緑のガイドラインで車幅を表示して前方の風景に重ねることで、道路の正しい位置を走ることができます。

メガネなど矯正視力の方は、乗用車のスピードメーターと前方の様子を交互に見るとボヤけて見えることがありますが、ディスプレイに計器の情報を表示することで、そうした心配もありません。このほかカメラの補正機能によって、夜でも明るい風景の中を走ることができるようです。

4Kディスプレイには、必要な情報をすべて表示可能(左)。運転にはゲームコントローラーを使います(右)。PlayStationっぽい、というかそのまんまです

このほか、窓の必要がなくなったことで、車外にはデジタルサイネージを自由に配置できます。するとクルマの色を変える、なんてことは一瞬で行えるでしょう。ソニーの画像認識ソフトウェアを使えば、周囲の環境に合わせた色に変える、あるいは周囲にいる人の属性に合わせたインタラクティブな広告を打つ、といったことも実現できるそうです。

車体のフロント部には、ブースの担当者が「肉眼よりも正確にモノをとらえる」と自信を見せていたソニーのカメラセンサーが配置されていました

このニューコンセプトカート、そういったわけでディスプレイだけ見ていれば、一通りの運転ができてしまうのです。そうなれば、もはやドライバーが中に乗っている必要がなくなります。つまり通信さえしっかりしていれば、どこか遠隔地のオフィスで操縦することも。そこでソニーが期待しているのが、ドコモの5Gネットワークというわけでした。では実際、どんな使い方を想定しているのでしょう。

まだプロトタイプという位置づけ。ちなみに、VRヘッドセットによる操縦方法も検討したそうです

ブースの担当者は「まずはクローズドな空間で試験していきます。ゴルフ場、リゾートホテル、ショッピングモール、遊園地、といった場所での移動手段、コミュニケーション手段として導入していけたら」と話します。

現在は、後継モデルを使って沖縄の大学で走行試験中を行っているとのこと。「どんなUI(ユーザーインタフェース)が最適か。操作性を高めるためには、ディレイの影響を少なくするには、といったテーマを研究しています」(担当者)。どんなサービスの形があるのか、ビジネスをどの方向に進めていくのか、模索を続けているようです。

ところで、未来のクルマとなると自動運転にも注目が集まっています。これについて担当者に聞くと「自動運転も考えていないわけではありません。実際に走らせて記録を取りながら、どのような形で自動運転が実現できそうか、検討していきます」と話していました。