話を新aiboに戻そう。

新aiboはネットワーク接続が必須の機器となる。新aiboは、過去のものに比べ、圧倒的に高度な「外界認識機能」を備える。腰にある魚眼レンズカメラで周囲を認識、部屋の立体構造をマッピングして記憶するほか、鼻にあるカメラは人の顔やシルエットを認識する。ボールや骨状のおもちゃ「アイボーン」は相変わらずピンクなのだが、これは過去のAIBOから「お約束として」(川西氏)継承しただけで、特定の色のものしか認識できないわけではない。

多数のセンサーを搭載。鼻先にある魚眼レンズカメラによる撮影(右)では、ソニーの人物認識技術を用いて飼い主などを特定する

オーナーを含めた十数人の顔を識別し、よく遊んでくれる人にはよくなつくようになっているし、声や顔に応じて、そちらへと歩いていくようにもなっている。aibo自身の処理能力やセンサーの能力も向上しており、いまならばかなりのことができるようになった。

メインメモリーは4GBと初代機(ERS-110)比で256倍に、ストレージ容量に至っては2048倍まで増えたが、それに加え、クラウドの力を使えるようになったことで、より多くの処理が可能になっている。こちらを加味すると、容量換算はもはや無意味なレベルだ。

川西氏は「即応性の必要な認識処理はaibo側で行うものの、時間をかけてもいいもの、例えば部屋のマップの分析などは、いったん画像をクラウドに送ってしまい、処理をしてからあたらめて結果を受け取るようになっている」と話す。バックエンドは、Webサービスの構築でみなさんにもお馴染みのAmazon Web Services(AWS)。複数のサービスを組み合わせて、認識や情報の分析が行われる。

AWSをバックエンドに採用した

ではどこまで高度なことができるのか? ペットとしての個性や成長がどこまで幅広いものになったのか?充電ステーションには自走して戻ることができるようになったようだし、「個性の幅は、過去のAIBOとは比べものにならないくらい広くなっている」(川西氏)とはいうものの、そのあたりはまだはっきりしない。シナリオベースで「きまった動きしかしない」ロボットはすぐに飽きてしまうものだ。どれだけ驚きを与えてくれそうなのか、もう少し情報が欲しいとも思う。

とはいえ、そこを逐一すべて明らかにしてしまうのは、手品のネタばれのような部分があり、興を削ぐ部分もあろう。生活の中での「快活さ」「かしこさ」などを、発売に向けてもう少しうまくプロモーションしてもらいたい、と思う。

なお、ペットロボットにはひとつ、重要な問題がつきまとう。

それが「寿命」だ。一緒に暮らす感覚になるため、他の家電製品と違い、「壊れる」ことへの恐怖はさらに大きいものになる。旧AIBOのサポートが終了したことが、オーナーに大きな衝撃を与えたことは記憶に新しい。ソニーはもう一度、あの悲劇を繰り返してはならない。

特に新aiboは、クラウドと連携する仕組みになっている。だから、「本体が壊れなくてもサービスが終了したら、動かなくなってしまうのでは」と感じる。ただ、この点については、一応配慮されているようだ。

「サービスとの接続がなくなっても、aiboは動きます。ただし、新しい学習ができません。その時の状態のまま、動き続けることになります」

筆者の問いに、川西氏はそう答えた。すなわち、クラウド側の処理は主に「学習」に使われており、日常的な動きはaiboの中で行われている、ということだ。この辺から、新しいaiboの「クラウドによる進化」という特質が少し見えてくるわけだ。