AppleはAシリーズのプロセッサをiPhone向けに進化させ、その他の製品で共有する、そういう方針で商品設計を進めているのが分かる。そうなると、もう一つの製品ライン、すなわちMacにAシリーズのプロセッサを採用するかどうか、という疑問も湧き上がってくる。前述の通り、すでにIntel Core i5 3.5GHzよりもA11 Bionicの方が高速に動作するというスコアが出ている。ならば、A11 Bionicを搭載するMacの方が、より高速に動作するのではないか、と単純なアイディアも浮かぶ。

もちろん、そのアイディアは想像したほど正しくない。スマートフォンが処理性能をフル回転させる状態を10分も20分も続けるような利用シーンが想定されているわけではなく、パソコンのプロセッサとして採用して果たしてその性能がスコア通り発揮されるかと言われると、必ずしもそうではないからだ。

ただ、AppleがiPhone向けに自社開発のプロセッサを採用し、A11 Bionicではグラフィックスチップまで自社設計に切り替えている。加えて、Apple Watchには、高速化されたデュアルコアを備えるS3とともに、W2チップと呼ばれるワイヤレス向けのチップを自社開発し、無線通信の高速化と省電力性を高めている。ちなみにワイヤレスチップの第1世代となるW1は、AirPodsやBeatsのワイヤレスヘッドフォンに採用されたものだ。

MacBook Proに搭載されたT1チップ

MacBook Proにも、Touch BarとTouch IDを搭載するにあたり、T1チップと呼ばれるプロセッサがIntelのCPUと別に搭載された。有機ELタッチパネルを採用するTouch BarとTouch IDの管理に、watchOSの派生バージョンが動作し、macOSと連携してセキュリティ管理を行っていると言われている。Appleの昨今のプロセッサに関する取り組みと最新のMacBook Proを考えると、AppleがMac向けに全ての処理・グラフィックスを行うプロセッサを開発する可能性以上に、例えばセキュリティや機械学習などの処理を任せるようなプロセッサを搭載させる可能性の方が高いのではないだろうか。