当日は、少し風が強かったが、標高650mの高さにある農園に立つと、なんとも爽快。約20ヘクタールの敷地にはギッシリとブドウの樹が並び、葉がサワサワと揺れている。この日は、ブドウの収穫をお手伝いしてくれるボランティアと、植生の再生・保全活動を行うキリンのスタッフにわかれて行動した。

まず最初に、国立開発研究法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動センター 生物多様性研究領域 上級研究員 楠本良延氏が解説してくれた。楠本氏によると、農業と環境の研究をできる場所は貴重だそうで、椀子のブドウ農園では168種の昆虫、288種の植物が確認できたそうだ。

農園の植生について解説する楠本良延氏。ピンクのビブスを着用しているのがキリンのスタッフ

ブドウ農園の多様性が草原の植物を育む

これほどの生態系となったのは、ブドウ農園の多様性にあるという。「日本は以前、30~40%の土地が草原でした。化学肥料がなかった時代、草原に生えている植物を肥料代わりにしたり、牛や馬の食料としたりと重宝していました。ただ、こうした草原は現在1%ほどになってしまっています」(楠本氏)と話す。

だが、ブドウ農園は、ブドウが植樹されている以外は、基本的に草原。その環境の良さから日本の既存種・希少種といった植物が戻ってきたのだという。今回集まった30名ほどのキリンスタッフは、そうした植生を再生・保存するため、全国の事業所から集まってきた。余談だが、この活動は社内でも人気らしく、抽選で参加者が選ばれるという。

日本の既存種・希少種。左上から時計回りに「カワラナデシコ」「ツリガネニンジン」「コウゾリナ」「ゲンノショウコウ」