IoTベンチャーとして注目されたソラコムを子会社化したことで、大きな注目を集めたKDDIのIoTビジネス。だが同社はソラコム買収以前にも、IoTビジネス拡大のためさまざまな布石を打ってきている。今後急拡大する可能性が高いIoTの分野で、KDDIは優位性をどこまで高められるだろうか。

立ち上げ時期のIoTビジネス開拓に向けた買収

去る8月2日、KDDIがIoTベンチャーのソラコムを買収して子会社化することを発表し、大きな驚きを与えた。ソラコムは設立3年目の企業ながら、通信のコアネットワークをクラウドに構築するという独自の技術で注目され、IoT向けネットワークの分野で急速に存在感を高めたベンチャーの雄でもあった。それだけに、KDDIの大胆な買収劇は驚きをもたらしたわけだ。

だがKDDIのここ最近の取り組みを見ると、実はソラコムの買収以前よりIoTビジネスの拡大に向け、さまざまな布石を打っており、IoT分野での事業拡大に向け非常に力を入れている様子が見えてくる。改めてKDDIのIoTビジネスに関する動向を追ってみよう。

同社は15年前から、機械同士が通信をしてデータのやり取りをする機械間通信(M2M)の分野に取り組んでおり、この分野では豊富な実績を持ち、2007年から2016年の10年間で、M2M/IoT端末の累計稼働台数は6.6倍にまで拡大している。だが日本では海外、特に欧米と比べIoTの導入が遅れているそうで、市場拡大に向けては多くの課題があるという。

KDDIはM2Mの時代からIoTに向けた取り組みを実施。車や住宅、スマートメーターなどへの導入実績を持ち、累計稼働端末台数も10年間で6.6倍に拡大しているとのこと

そうしたことからKDDIでは、従来のM2Mと同じ取り組みだけでは市場が広がらないと判断。企業がIoTビジネスを展開しやすくするため、ネットワークやデバイス、サービスを包括的に提供して企業のIoTビジネスをサポートする、IoTプラットフォームの構築に力を入れるようになったのである。

ソラコムの買収は、そうした同社のIoTプラットフォームのうち、ネットワーク部分の弱みを解消する策の1つだったといえる。KDDIが従来のM2Mビジネスで展開してきたのは、コネクテッドカーやスマートメーターなど、大量導入を前提とし綿密なサポートを提供する、大企業をターゲットとしたものが主体だった。

だが現在のIoTビジネスに対するニーズは、まだIoTに関する実績を持たない企業が、低価格・小規模でIoTビジネスを立ち上げ、徐々に大きくしていくというケースが多く、従来のKDDIのビジネスモデルだけではニーズに応えられなくなってきていた。そこでKDDIはIoTビジネスの立ち上げに強みを持つソラコムとの協業で、昨年12月に「KDDI IoTコネクト Air」を提供。さらにその協力関係を推し進めて双方のIoTビジネスを拡大するべく、今回の買収へと至ったのである。

KDDIは包括的なサービスの提供による大規模なIoTビジネス、ソラコムは低料金で柔軟性の高いサービスで小規模、立ち上げ時期のIoTビジネスに適しており、補完関係にある