ソラコム買収で得た優位性とは

こうした一連の施策によって、KDDIはIoTに必要な要素をワンストップで提供できるプラットフォームを一気に整えたといえる。そして今回、ソラコムがその仲間に入ることによって、IoTプラットフォームの充実度は一層高まるものと考えられそうだ。

特に短期的視点で見た場合、ソラコム買収のメリットが大きいと考えられるのは、IoTの導入事例を大幅に増やせることだ。先にも触れた通り、現在IoTに興味や関心を示す企業自体は増えているものの、前例が少ないため実際のサービス開発に踏み込めないケースが多い。ある意味、現在企業が求めているのはIoTの“前例”でもあるのだ。

だがKDDIは、自社が長年手掛けている大企業を主体としたIoT/M2Mの導入実績に加え、今回ソラコムを傘下に加えたことで、同社が持つ小規模なIoTビジネスの事例や実績が多く加わることとなる。それゆえ従来より多くの事例を顧客に提示し、幅広い提案をすることで、顧客に安心感を与えられるようになるわけだ。

この点は、特に同業の大手通信事業者と比べた場合の大きな優位点となると考えられる。大手携帯各社はM2Mの時代からIoT関連ビジネスを手掛けているが、その多くはやはりKDDI同様、大企業相手のものが主体だ。だがKDDIはソラコムの活用で、より小規模のビジネスに適した事例の提示とサービスの提案ができることから、一層幅広い顧客を獲得できるという点でも優位性があるといえよう。

とはいえ最近では通信事業者だけでなく、メーカーやソリューション事業者など、多くの企業がIoTプラットフォームの提供を打ち出すなど、この分野での競争は日増しに激しくなってきている。KDDIが優位性を確保し続け、IoTビジネスを一層拡大させるためには、さらに1歩先の手を打ち続けていく必要があるといえそうだ。

IoT関連プラットフォームを手掛ける企業は増えており、今年7月にはNECパーソナルコンピュータらがIoTオープンイノベーションプラットフォーム「plusbenlly」を開始している