石渡: 東芝の商品を購入して、3年で壊れたというわけにはいきません。極端な言い方になりますが、東芝の商品であれば、20年間は使えたといわれるような信頼性が必要です。そこは、これからも変えません。マイディアグループも、それを理解しはじめてくれています。

しかし、だからといってスピード感がないままではいけません。商品化するのに、3年かかるなんてことは許されません。では、これを1年でやるにはどうするか。それならば、検査の機械を2台に増やしたらどうか、あるいは、3人しかいなかったら、10人でやればいいという発想ができる。これが、これまでにはできなかったことです。変えてはいけない部分は、安全基準であり、性能、信頼性です。一方で、変えられる部分は、プロセスです。そこに投資をすることで、スピードアップにつながるというわけです。

シナジープロジェクトの効果

――両社の強みを生かすシナジープロジェクトを進めているとのことですが。

石渡: シナジープロジェクトの成果はすでに出始めています。今後、東芝が持っていなかった小型の冷蔵庫や、電子レンジなどを、マイディアの商品をベースにして、TOSHIBAブランドで発売することになります。これは、仕上げの部分はすべて東芝の基準で行います。東芝のエンジニアが、一から商品を作るとそれなりの時間がかかり、数億円もする金型投資などを含めてコストもかかりますが、マイディアの商品をベースにすれば、これまで東芝では出せなかったような商品が、短期間に市場投入できます。同じように、逆もあります。マイディアが持っていなかった東芝の商品を、中国市場で販売するといったことも可能になります。すでに、冷蔵庫やクリーナーでは、東芝の工場で生産したものを、マイディアのブランドで販売しています。海外ではサイド・バイ・サイドの冷蔵庫が売れていますが、東芝はこれを持っていません。これをTOSHIBAブランドで海外展開する上で、活用することができます。シナジープロジェクトの効果として、これから、より幅広い商品をラインアップできるようになります。

海外市場で展開している「Midea」ブランドのサイド・バイ・サイドの冷蔵庫(イメージ)

作っている工場に関係なく「TOSHIBA」品質

石渡: 実は、よく、「これはマイディア製ですか、それとも東芝製ですか」という質問を受けます。それは生産している工場のことを指した質問だと理解しています。私にとっては、そこはあまり関係ありません。

では、TOSHIBAブランドとはなにかというと、TOSHIBAブランドを維持するための品質、品位を持った商品であり、そのための基準をクリアしたものを指します。マイディアの工場で作ったマイディアの商品を東芝が売っているというのとは違うのです。ベースとなる商品もマイディアが設計した縦型全自動洗濯機です。しかし、これをベースに東芝の技術を注入して、東芝の安全規格やスペックなどを用いて、商品を企画し、仕上げたものがTOSHIBAブランドの商品なのです。

マイディアの工場で生産しても、東芝の工場で生産しても、TOSHIBAブランドをつけた商品は、すべて東芝の商品です。その点を理解していただきたいと思います。