それでも僕らは腕時計をしたい

後半は、司会者からの質問に奥山氏が回答していった。時計をデザインすることについての思い入れを聞かれると、「今日、私たちの生活環境にはたくさんの時計が存在する。それらを通じて、いつでも極めて正確な時刻が分かる。それでも僕らは腕時計をしたい。その欲求は、単なる必要性を超えたところにある。時計の精度を究極にまで高めることにはロマンも感じる。時計は人の命を超えた存在で、機械式の時計は何百年とこの世に残る。そんな製品のデザインに携われたのが嬉しい」(奥山氏)と笑顔を見せた。

奥山氏の腕に光るのは、この日に工場の生産ラインで完成したばかりのGT。トークセッション中、何度も眺めては満足そうな表情を浮かべる姿が印象に残った

これまで、ISSEY MIYAKE WATCHは、世界で活躍するプロダクトデザイナーとコラボレーションを行ってきた。デザインコンセプトは「シンプルで斬新、かつ永く愛されるデザイン」。アナログウオッチであり、日本製であること、時計のみならずパッケージもデザインして世界観を表現することなどが求められている。

GTの化粧箱の様子

まず日本製にこだわることについて聞くと、奥山氏は「日本のモノづくりの素晴らしさには、日本人がいちばん気付いていないのかも知れない。私はイタリアに12年も住んでいたが、帰国したとき、日本にはイタリア以上にデザインの活きるプロダクトやフィールドがあると感じた。これを日本人が語らないのはもったいない」とする。

世界で活躍するプロダクトデザイナーとコラボレーションしてきたISSEY MIYAKE WATCH。その輪の中に、新たに奥山氏が加わる

シンプルで斬新、かつ永く愛されるデザインについては、「噛んでいるうちに甘さがなくなり、味が戻ってこないチューインガム製品にはしたくなかった。ISSEY MIYAKE WATCHコレクションの他の時計に比べると、GTは形状的にはシンプルだが、モダンも秘められている。ISSEY MIYAKEというブランドについて考え、その中で僕らのアイデンティティのあり方を考えた結果、このデザインになった」(奥山氏)と述べている。

最後に「GTは、ISSEY MIYAKE WATCHの新しいステージになった。これを世界に展開していきたい。購入されたお客さまは、ぜひ、海外旅行の際に腕につけて、世界中の方々に見せていただけたら」(奥山氏)と会場の笑いを誘い、締めくくった。