2017年度成功のカギは車載事業の促進
なかでも、2017年度の成長戦略を牽引するのが、車載事業である。
津賀社長も、「車載を中心とした高成長事業が全体の増収を牽引する」と自信をみせ、「車載事業は、2014年以降、積極的に取り組んできたが、それが、2017年後半から目に見える形で成長が見込め、2017年から複数の大型案件の納入を順次開始する」と語る。
津賀社長は、約10年前に、オートモーティブ事業の責任者をつとめていたが、その時点で、クルマの電子化、電動化の時代が到来することを見据えて、テレビなどのデジタル家電技術のリソースを車載向けにシフト。さらに、三洋電機買収によって得た電池やデバイス技術も集約して、オールパナソニックで、車載事業の成長戦略を推進してきた経緯がある。
この成長事業領域を熟知する津賀社長は自信をみせながら、「今後も、EVなどの環境対応車の普及や、自動運転技術の急速な進化などによる電子化、電動化に向けた動きが加速するなか、パナソニックの強みを生かせる分野に集中しながら、さらなる成長を実現させる」と意気込む。
大型案件としては、ジャガーレンジローバー向けに、ディスプレイやヘッドアップディスプレイの納入を開始したことを明らかにしてみせた。
さらに、車載事業では、これらのインフォテインメントとともに、車載用電池がもうひとつの成長の柱となる。
「これまでの電池事業はノートPCや携帯電話向けなどのモバイル向けだったが、このリソースを車載用にシフトしている。現在は、日本と中国で生産しているが、今年は米テスラのギガファクトリーでの生産が本格化する。これにより、本数、金額ともに北米での生産が最も多くなる」とする。現在、テスラに納入している電池も日本および中国で生産したものだ。テスラとの協業が、パナソニックの車載用電池事業の成長を大きくドライブすることになる。
「車載事業では、着実な成果が出ており、2018年度には車載事業の売上高で2兆円が視野に入ってきた」と、2016年度実績の1兆3000億円から、この2年で、売上高を1.5倍にまで引き上げる考えも示す。
「社内では2020年以降の売上げ目標も設定しているが、右肩上がりの数字となっており、継続的に伸ばすことができると考えている」と、この分野では強気の姿勢を崩さない。だが、いくつかの不安材料があるのも事実だ。
テスラへの依存高く、懸念も
ひとつは、成長戦略において、テスラへの依存が大きいということだ。
とくに、車載電池では、テスラのギガファクトリー向けに大型投資を進めており、この進捗が車載電池事業の成長を左右することになる。
もちろん、テスラ以外との協業も模索している。
だが、津賀社長は、「欧州の自動車メーカー向けには、欧州に電池工場が必要だが、信頼できる自動車メーカーと“握る”ことができるかが重要である。そうでなければ投資はできない。現在、欧州の自動車メーカーの要望を聞いているところであるが、他の地域で生産したものを持ってくるのか、ある一定の期間までは他社から調達してもらうのかといった様々なケースを想定している。仮に、大規模な電池工場に投資をするのであれば、2020年以降のことになる」とし、テスラ以外との協業成果は、先の話になる。少なくとも、2018年度までの成長戦略は、テスラとの協業が左右する体質は変わらない。