一歩ずつ改善を進めるUI その2

デスクトップの見栄えという観点から見ると、Windows 10のアクセントカラーに関する仕様は首を傾げるものだった。Windows 8の悪癖をそのまま引き継いだため、初期のWindows 10でも酷評されていたことを覚えている方も少なくないだろう。バージョン1507では決まった20数種類しか選択できず、それ以外の配色を選択するにはちょっとした工夫が必要だった。過去のWindowsでも同様の仕様であれば利用者から不満も上がらなかったはずだが、この制限はWindows 8からWindows 10 バージョン1607まで続いている。

利用者から上がる不評の声に応える形でMicrosoftは、ようやくGUIベースでアクセントカラーの配色を自由に変更するため、機能拡張を行った。バージョン1703では「設定」の<個人用設定/色>に並ぶ<カスタム色>をクリックすると、スライダーなどを用いて微調整可能な設定項目が加わっている。<More>をクリックするとRGBやHSV、Webカラーなどを用いた数値指定も可能だが、興味深いのは利用者に注意をうながすメッセージの存在だ。例えば初期状態からスライダーを左方向に動かして、明度を下げると「この色は読みにくい可能性があります」「この色はサポートされていません」と選択した配色の強調性を欠くことを未然に防いでくれる。筆者自身はアクセントカラーは既定のまま使っているため、使う場面は多くないが、カスタマイズ好きには便利な機能になるだろう。

「設定」の<個人用設定/色>に並ぶ<カスタム色>をクリックするとアクセントカラーをカスタマイズできる

<More>をクリックすると配色の数値指定が可能になる

デスクトップ周りでは「夜間モード」の存在の興味深い。俗に言う「ブルーライトカット」機能をOSレベルでサポートしたものだが、本機能を有効にすると既定では天気予報などの情報から日没から日出の時間までを取得し、自動的にオン/オフを切り替える。また、設定ページでは有効時の色温度や有効時間帯の手動設定も可能。違いを見せようと画面ダンプを撮ってみたところ、画像ファイルレベルでの差が生じないため、ディスプレイの色温度を直接調整しているようだ。なお、夜間モードの実行はアクションセンターのクイックアクションからも実行できるため、屋内など場面に応じてすぐに有効化できるのもありがたい。

「設定」の<システム/ディスプレイ>に並ぶ<夜間モード>。有効にすると既定では日没から日出までの時間で自動的にオン/オフを切り替える

<夜間モード設定>をクリックすると、夜間モード有効時の色温度調整やオン/オフの時間が指定できる

そのアクションセンターは大きな変更点は加わっていないものの、「ストア」でUWPアプリケーションをダウンロードする際の進捗状況を示すプログレスバーが通知内に加わった。PCゲームなど数十GBのファイルをダウンロードする際は[Win]+[A]キーを押せばひと目で進捗状況が確認できるため、内部構造が不明瞭な「ストア」の動作を確認する際に便利になるだろう。

アクションセンターの通知は「ストア」のプログレスバーと連携し、ダウンロードの進捗状況を確認できる

個人的に残念だったのが「MyPeople」の実装が見送られた点。2016年10月のイベントでMicrosoftは、「過去10年間我々はデバイスを通じて、人々とコミュニケーションを取る方法の多様性を目にしてきた。成長を続けるSNSの利点は明確ながらも、同時に複雑化というコストがかかる」と前置きしつつ、同機能をアピールしていた。タスクバーに特定の相手をアイコンとしてピン留めし、ファイルやメッセージをドラッグ&ドロップで送信する、コミュニケーション補助機能である。筆者もSkypeプレビュー経由でファイルを送受信する場面が多いため、MyPeopleに期待していたのだが、次期大型アップデートとなるRedstone 3(仮称・開発コード名)で実装されるか否か注視したい。

2016年10月のイベントで披露された「MyPeople」。Windows 10 バージョン1703での実装は見送られた

UIという視点ではタッチパッドの機能拡張もバージョン1703が備える特徴の1つである。PC市場で精密タッチパッドを採用するデバイスが増加したことから機能拡張が行われたと思われるが、バージョン1607までは<デバイス/マウスとタッチパッド>と両者をまとめているものの、バージョン1703からは<デバイス/マウス><デバイス/タッチパッド>と個別に扱われるようになった。さらに精密タッチパッドに対してはジェスチャー機能を拡張し、3/4本指によるジェスチャー操作のイラストを追加している。こちらのジェスチャー機能は固定されているものの、スワイプ及びタップ操作時のアクションはドロップダウンリストから選択できるため、ユーザーの使用スタイルに応じてカスタマイズ可能になった。

設定項目の増加により独立した<デバイス/タッチパッド>

3本及び4本指によるジェスチャー操作のイラストが加わり、スワイプ及びタップのカスタマイズ範囲が広がった