第3世代のクラムシェルモデルの重量は779gであり、800g未満という提案では、従来製品を超えながら、2in1を実現するという意思を反映したものにはならない。

しかし、これまでの経験で、開発チームが779gの重量を切るために努力を惜しまないことを中井主任は理解していた。779gを切るという目標は、企画書には明文化されてはいなかったが、開発チームの共通認識は779gを切ることであったのは明らかだった。

第4世代LAVIE Hybrid ZEROを手にする中井主任

開発チームは材料を見直し、構造に工夫を凝らし、細かい軽量化作業を積み重ねた。過去の製品でもその努力は極限に達していただけに、「絞りきったボクサーの体重を、さらに絞り込むような作業」(中井主任)というのも的を射た表現だろう。

社内で779gを切ることが正式にわかったのは、2017年1月中旬のことだった。ぎりぎりまで開発チームは努力し、2in1の形状ながら、第3世代のクラムシェルモデルの重量を10gも下回ったのだ。

なぜ2in1に一本化したのか

実は、第3世代の製品では、クラムシェルモデルの販売数量が過半数を超えていた。そのため社内では、クラムシェルモデルを存続すべきとの意見もあがった。

だが、中井主任は、2in1に一本化することにこだわった。それは製品名の変更に込めた思いとともに、先に触れたように、もはや単に軽くするだけでは驚きと感動を与えられないと判断していたからだ。

「テクノロジーが進化するなかで、いつまでクラムシェルだけで最軽量を追求するのか。クラムシェルで10g、20g落として、最軽量を追求しつづけることが、ユーザーにどんなメリットがあるのか。それはメーカー側の視点に過ぎない。ユーザー視点で見れば、新たな技術や使い方に適した2in1 PCにしないと、最軽量を追求する意味がない」。

この基本姿勢を共有したNECパーソナルコンピュータの社内からは、クラムシェルモデルで最軽量を追求しつづけるという意見は一切あがらなくなった。

360度回転ヒンジにより、タブレット形状やクラムシェル形状などで使える2in1 PCとなった