インテル 代表取締役社長 江田麻季子氏

インテルは3月1日にプレスセミナーを実施。小売業向けのIoTソリューションや5Gなど、同社が重点分野とする領域に対する取り組みを紹介した。

まずはインテルの代表取締役社長の江田麻季子氏が、インテルの事業における今後の方向性として「データカンパニー」になると説明。「2020年には膨大な数のデバイスがインターネットに接続され、多くのデータが爆発的に生み出されると言われているが、データを効果的に収集、分析することで洞察や知見として利用できる"価値のあるデータ"にするための基盤を確固たるものにする」という。この情報基盤が増える事は半導体デバイスの需要を生みだし、インテルの成長に繋げる。

2020年のIoT時代は大量のデータが生み出される

大量のデータを処理するための基盤を今後インテルが作り出すという

戦略的な重点領域としてはクラウド、AI、ネットワークとメモリ、FPGA、5G。そしてそこから生み出されるデータリッチなモノと機器になるという。このうち、いくつかの分野に関してはさらに掘り下げた説明を行っていた。「クラウド、AI、ネットワーク」は現在の中心となっているビジネスで最も力を入れている分野だという。

大量のデータをやり取りし、処理するために必要な3つの重点領域があるという

AIに関してはIntel CPU群やFPGAといったハードウェアにとどまらず、AIアーキテクチャやプラットフォームの最先端企業を買収。今後もテクノロジーや支援・育成プログラム、R&Dに大規模な投資を行っていく。

AIに関してはIAやFPGAだけでなく、先端企業にM&Aを行う事でポートフォリオを拡大

「ネットワーク、メモリ、FPGA、5G」は、大容量のデータを動かすために高速で大容量のメモリと柔軟なネットワークが必要であり、5Gに関してはIoT時代で膨大なデバイスがインターネットに接続されるために不可欠な技術として積極的なコミットをしている。

5Gはモノ同士のやり取りを行うためには不可欠であるという

データリッチなモノと機器、具体的にはIoTデバイスになるが、単にネットワークに繋がる時代から、インテリジェントな相互接続が行われるスマート化へと進化し、さらにはデバイス同士が自律的に繋がる自動化へつながるという。このためにもAI技術は不可欠になると指摘。また、IoTデバイスが増えれば、管理・制御するためのサーバー需要の創出に結び付くと、IoTの発展と共にクラウド(サーバー)ビジネスも伸びる見込みを示した。

データリッチなモノと機器と機器

エッジデバイスが増えれば、それを処理するサーバーが必要という事でサーバー需要がある

業界としては、小売・交通・産業/エネルギー産業に対して特化することで、市場予測以上の成長に挑む。新しい分野である自動運転に関しては新しい事業部を設置し、取り組みを加速させる予定だ。

市場予測でフタケタ成長が見込める重点業界に特化。市場予測以上の成長を見込む

小売業では、店舗内でのIoTの活用やリアルタイムでのデータ分析によって、在庫情報の精度を上げるほか、顧客とのエンゲージメントを高め、課題の解決につなげる。

市場予測でフタケタ成長が見込める重点業界に特化。市場予測以上の成長を見込む

一方の自動運転は、車載コンピューティングや5Gも関わることから、インテルの重要エリアを横断した領域となる。江田氏は自動運転車を「車輪の付いたデータセンター」と表現。2017年1月に発表した自動運転車向けのプラットフォーム「Intel Go」を自動車メーカーに提供し、次世代の自動運転車を支援するという。

「動くデータセンター」ということで、自動運転車は多くの半導体需要を生む

自動車業界にIntel Goプラットフォームを提供し、短期間に市場を確立させようと考えているようだ

小売店向けのインテル レスポンシブル・リテール・プラットフォームを提供

インテル IoTアジア・セールス IoTマーケット・デベロップメント ディレクターの佐藤有紀子氏

引き続き、インテル IoTアジア・セールス IoTマーケット・デベロップメント ディレクターの佐藤有紀子氏が、小売業界に向けた取り組みを説明する。江田氏が説明したように、IoTは単にインターネットに繋がる時代から、インテリジェントな相互接続、そして目的に応じて自律的動作を行う「Software Defined Machine」となり、さまざまなデータによって認識、洞察、提案、予知を行うようになるという。

インテルとしては、横断的に幅広く使えるビルディングブロックを提供するだけでなく、業界特化のソリューションの提供と、複数の企業と連携するエコシステムを作ることでIoTに取り組む。

自動車業界にIntel Goプラットフォームを提供し、短期間に市場を確立させようと考えているようだ

小売業の進化として、実店舗ではサプライチェーンの効率化、Eコマースでは個人やグループのデータを活用した顧客へ対する知見が使われているが、インテルでは今後、小売業でもリアルタイムのデータ分析により、店舗の最適化を行う「レスポンシブル・リテール(応答性に優れた小売店)」が進むという。

小売業の例。Eコマースでのデータ活用をリアルタイムで利用することで実店舗でも最適化が図れる

小売店で買う前にネットを調べる人は増大。しかし、店舗でうまく誘導できれば当初の目的外のものも購入する。また、思ったよりも小売店は残ると分析している

現在、小売店にとって「人的資本の管理」という問題に加えて、顧客とのエンゲージメントと在庫精度の向上という課題があるが、これをインテル レスポンシブル・リテール・プラットフォーム(インテルRRP)によって解決する。

現在の小売業者が抱える課題。特に在庫に関してはなければ機会損失、多ければ不良在庫となるので難しい

ヒアリングの結果。意味のない情報と連携しないシステム、新テクノロジーはいまひとつといったところ

インテルRPPを使うことで、孤立していたテクノロジーを連携させ、安全で拡張性の高いサービスを短期間で開発できるほか、実践的な知見が得られるという。また、先の課題以外にも地域別/個人別の対応や動的価格設定など様々なユースケースに対応できるとしている。

このような問題をインテル レスポンシブ・リテール・プラットフォームで解決するという

現在、RFIDを使用した在庫管理ソリューションがSIerから提供されており、さらに2017年中にいくつかのソリューションが提供される。インテルRRPに関しては2017年3月7日から開催されるリテールテックJAPAN 2017でも展示する。

RFIDを活用することで、目的の商品が棚にあるのか、バックヤードの在庫品なのか、はたまた別の顧客がすでにかごに入れているのか、あるいは試着中なのかと店舗内の商品の場所も把握し、複数のデータを活用するスマート小売店

小売業の様々なユースケースに対応できるという

RFIDに関してはすでに提供が開始されており、その他のソリューションは今年中に順次提供されるという

島精機製作所との協業の例。ニットの新デザインをCGで作成し、これを自動織機で短時間に製作。これもリテールテックで展示される予定

IoTのデータ転送を支える5G技術は他社との検証へすすむ

インテル 通信デバイス本部 グローバルワイヤレス営業本部 日本担当ディレクターの庄納崇氏

最後にインテル 通信デバイス本部 グローバルワイヤレス営業本部 日本担当ディレクターの庄納崇氏が、5Gについて説明。アナログの携帯電話をデジタル化した2Gから始まり、いまでは通信速度の高速化を実現した4Gが広く使われているが、10年前に規格化されたためにIoTのような膨大なデバイスへの接続が考慮されていないという。

エッジで取得したデータをクラウドサーバーまで伝えることを想定した移動体通信が必要ということで、業界を挙げて開発が進んでいるのが5Gだ。

アナログからの置換から、データへの利用。そして高速化ときたデジタル移動体通信はIoTに向けた5Gを目指している

インテルの予測によると、2020年までに500億のIoTデバイスが、2120億超のセンサーを通じて取得したデータをやり取する。さらにその47%がモノ同士の接続になるとの見通しだ。膨大なデータが毎日生成され、ネットワークを通じてやり取りされる。これに対応するためにふさわしいネットワークが必要というわけだ。

せいぜい1Gbps程度の4Gでは速度が足らず、さらに500億のデバイスが相互にデータをやり取りするためには5Gが必要になるという

簡単な5Gの概要。高速で大容量かつ低レンテンシ。その上で柔軟な構成が可能になる

現在は、ユースケース主導型で開発が進んでおり、パートナーと連携したフィールドトライアルやテストが行われており、プロトタイプが2017年中に発表される段階だという。インテルとしては、業界に先駆けて5Gモデム「Goldridge」を開発している。

2020年に向けた取り組みは進む。2017年中にプロトタイプが登場するところだそうだ

インテルは5Gモデム「Goldridge」を開発。第2四半期にはサンプル提供を開始する

サブ6GHzとミリメートル波の両方をコンパクトなチップセットでサポートする。2017年の第2四半期のサンプル出荷を予定する。2016年の段階では、仮想的な基地局で検証していたが、現在はEricsonの基地局における相互運用検証やライブデモも進んでおり、順調な開発状況であるとアピールした。

2016年は仮想基地局とのテストだったそうだが、1年でEricson基地局との相互運用性の確認とライブデモが行えた