そして白石氏は、「現在、キャンプを楽しんでいる層は、いわゆる“アウトドアビギナー”と呼ばれている方々が多いです。女性が楽しんでいる場合も目立ちます」と付け加えた。 その話を聞いて、アウトドア雑誌に在籍していた頃の記憶が甦ってきた。当然、雑誌の性質上、キャンプ場での取材もあった。手際よくテントを立て、スピーディーにたき火を起こし、ランタンのポンピング(ガソリン式ランタンの作業)に手慣れていた人をよく見かけた。もちろん、たき火がいつまでもつかない、キャンプ場のトイレに入れず(当時、不衛生なトイレが多かった)、クルマで商業施設まで行くというビギナーもいなくはなかったが……。
それを思うと、初心者や女性がキャンプを楽しめるのかどうか、頭をよぎった。
「現在のキャンプ場は、トイレが衛生的になっておりますし、お風呂があるところも珍しくありません。初心者でも扱いやすい用具は数多くありますし、ビギナーがキャンプを楽しめる環境が整っているのです」(白石氏)。
白石氏は「これはキャンプとまったく異なりますが」と前置きした上で、「今年は“グランピング”が注目されました。冷暖房完備のテントなどの宿泊施設がすでに設置され、食事も業者が用意します。自然のなかに泊まる“ホテル”ともいえ、利用料も高額です。ただ、10万円かけてキャンプ用品をそろえても、年に1回しかキャンプをしないのならば、そうした施設を利用するのもありかもしれませんね」と苦笑いを浮かべた。
話をキャンプに目覚めたアウトドアビギナーに戻そう。多くの初心者がこれほどキャンプに惹かれている理由はなんだろうか。白石氏は「ズバリ、スマートフォンです」と話す。
キャンプに行く源泉はスマホ?
スマートフォンと聞いて意外に思った。携帯電話がアウトドアブーム衰退の一因と前述したが、その“進化形”ともいえるスマートフォンがなぜキャンプの人気を推進するのだろうか。
「スマートフォンというよりかはSNSです。フェイスブックやインスタグラムにアップする写真を撮るために、非日常であるキャンプに行くのです。より豪華な写真を撮りたいという理由で、先ほど話したグランピングに泊まる方もおります」(白石氏)。
そして白石氏はこうも付け加えた。「テントの組み立て方法やガスコンロの着火方法が分からなくなっても、“YouTube”で簡単に確認できますから」と笑みをこぼす。
なるほど、目から鱗だ。つまり、スマートフォンとキャンプはとても相性がよいといえるだろう。