対応の壁は「工数」と「ユーザー層」

――Webアクセシビリティ推進を行う上で、現場とのトラブルの例や、それを回避するための方策はなにかありますか?

グリー 嘉久氏

グリー 嘉久氏: Webアクセシビリティの対応方針を対外的に公開する段になって、広報やIRに説明した時、属人的にならず永続的に実行できるのかという点、株主から見た利益をどう説明するかというところは突っ込まれました。

そこで、仮に僕たちから担当が変わっても取り組みが途絶えないように、記事作りなどのガイドラインを作ったり、ワークフローをまとめたりしました。また、Webアクセシビリティに取り組むということは、自社のコーポレートミッションメッセージである「インターネットを通じて、世界をより良くする。」に沿った活動であることを説明しました。

ヤフー 中野氏: トラブルというわけではないのですが、弊社でサービスにおけるアクセシビリティ対応を進めている際に、「高齢者・障害当事者はターゲットユーザーではないから、工数を割けない」という意見もありました。特定の年代をターゲットにしたサービスだから、ユーザー層以外はケアしないという見方ですね。

弊社ではJIS規格への対応を進めていますが、その名称には「高齢者・障害者等配慮設計指針」とあって、特定の人向けだという印象の強いタイトルづけがされているのですが、本来Webアクセシビリティは高齢者・障害者だけに限定した内容ではありません。そこで誤解が生まれてしまったのだと思っています。サービスのユーザー像と一致しなかったので、「関係ない」と思われてしまったんです。