3回目は、昨年マネージャーに復帰したとき。職位があがり、マネジメントするグループや範囲が広がった、新たな管理職としてのチャレンジだ。これまでのゼロから作りだすプロジェクトやチーム管理の経験とは違い、すでに出来上がっているチームをリードすることにプレッシャーを感じていっぱいいっぱいになったこともあった。しかも、2人の育児を1人で行うという、プライベート側の危機もあった(昇進と同時に、夫は海外赴任)。時短で育児と両立を図りながらマネージャー職を担うというチャレンジは、途方もなく大きく感じたのだ。しかし今となっては、そんな困難な転機も「チームと一緒に自身も成長できた」と、好意的に振り返る。

「時短という働き方においては、管理職の方が実はできることが多いと感じる。ビジョンの設定といった中長期的に物事を考えたり進めたりすることが多いから」と管理職になったメリットも大いに感じている。

育児がタスクとして増えた時、どうしたか

そんな何でも卒なくこなすように見える林さんも、第1子出産後の復帰1年目はペースがつかめず、苦労したという。「なぜか遠慮してしまった」と夫に家事や育児の手伝いを頼むことができず、すべてを1人で抱え込んだことを明かした。ついにはストレスが爆発し、夫にエクセルで全てのタスクと頻度と時間をまとめて見せ、現状を訴えたという。

「かなり引いていました」という夫は特別、非協力的な人物というわけではなく、「言わないと気づかない、やらない」そういうものなのだとその時気づいたのだという。その後は、夫と家事や育児を分業し、会社の福利厚生で使える家事手伝いサービスや病児保育支援なども活用しながら、時短勤務の管理職との両立を図る。

考える前にやってみる、経験が自信になる

現在の自分については、「1人目でいっぱいいっぱいだった時よりも、各段に仕事のスピードが上がり、幅が広がっている」と成長を感じている。「不安もあったけれど、考える前にやってみたら、なんとかなるもの。慣れというか、それまでの経験が学びとなって身につき、やり方やスキルも向上している。だから、子どもが2人になりタスク量は増えても、アウトプットが上がり、成長している。」

これまでのキャリアと子育てを振り返ると、「自分の能力が求められるなら、その期待に応えたい。きっとそこには意味がある」「子育て中は、制約条件はあるが、その中でできることを精一杯する、最大限する」気持ちで、果敢に新しいことを受け入れてきた。その結果が、“成長”として自身に還ってきていると思う。そんな林さん。同じ働く女性として「考える前に、不安に思う前に、やってみよう」と女性にエールを送った。

社員の声から改革が進む社風

入社間もなくから活躍している林さんのように、同社は社員一人一人が戦力となることを期待し、その機会を公平に与えることを大事にしている。

林さんも自身が活躍できた背景を、実例から制度ができる柔軟な会社の対応にあったと感じている。実例からとは、現場の声から制度ができるということ。楽天は、復職前後のセミナーや、託児所、搾乳室の設置など様々な両立支援が行われているが、それらすべては、社員たちが自発的に始めたり、上層部に声をあげたことで実現してきた。

これを可能にしているのは、社員が声をあげやすい、社員の声を吸い上げやすい機会(朝礼やメールによる相談窓口、ヒアリングの場など)を会社側が意識的につくり、それをスピーディに実現してきた実績だ。会社が応えてくれたという信頼が、また社員が声をあげやすくする。こういった働きかけが好循環を生んできたのだろう。

社員の声から実現。楽天の女性活躍がボトムアップで進められてきた背景には、同社の公平性、オープン、実現のスピードという社風があるといっていいだろう。