「女性活躍推進法」が施行され、ますます女性が活躍する社会が期待されている。しかし企業によってその進捗度合いはまちまち。主役となる女性も現場で様々な悩みを抱えている。そこで本連載は、自身も子育てをしながら企業に勤めた経験を持ち、現在は「女性のリーダーシップ」育成研修など、企業の女性活躍推進のサポートを行う杉浦里多が、企業が乗り越えてきた課題と、そこで働き続ける女性社員の生の声を通じてビジネスの現場で起こり得る課題を提示、解決のヒントを提示する。今回で連載は3回目となる。

第一回「P&Gの経営戦略に女性活躍が必要だった理由」
第二回「創業135年のOKIが短期間で女性活躍に舵を切れた理由」

1997年創業の楽天は、ECモールを中心としたベンチャー企業から、金融やスポーツの分野までそのすそ野を広げる大企業へ変貌した。企業の急激な成長とともに、社員のグローバル化、多様化が進む中、女性管理職の登用にはまだ課題が残る。活躍の機会は公平なのになぜ……? 急成長企業だからこその課題に迫る。

楽天本社

職場復帰後の女性に「活躍」を支援

楽天は、「男女関係なく、能力のある人がキャリアアップする」という考え方のもと、活躍の機会は男女公平に与えられている。女性活躍に関しても、「『長く休みスローダウンするよりも、活躍して欲しい』という意図から、敢えて法定以上の制度は取り入れない(育児休暇は1歳まで。時短勤務は3歳まで)」と明確なポリシーを持つ。

育児休暇や時短勤務の期間を延ばす、正反対の施策を充実させる企業も多いが、長く休みすぎるとかえって復職しづらくなるという“復職の壁”を考えると、女性の「活躍」という観点では至極、理に適った方針だ。同社の復職率は97%と数字もそれを物語る。

【楽天のダイバーシティの歩み】

(グローバル化によるダイバーシティ)
2010年、社内公用語英語化への移行開始

(女性活躍取り組み強化)
2014年、社員のボランティアによるワーキングマザーのコミュニティが発足
2015年、人事部内に専任組織「ダイバーシティ推進課」を設置
女性活躍推進法で2019年までに女性幹部社員比率を22%にすると設定(現在18%)
・意識醸成:ダイバーシティに関する社内情報サイト開設、セミナー実施
・成長支援:上司とともに、キャリアやアクションプランのセッションの実施
・早期復職戦力化:託児所、搾乳室(マザーズルーム)、休職前・復職前セミナー実施

三木谷浩史氏が創業した楽天は、わずか20年で売上収益7000億円超えの企業に成長。「楽天経済圏」と名付けたビジネスモデルは、今やオンラインだけ、日本だけにとどまらず、リアルへもグローバルにも突き進む。2010年、社内の公用語を英語にするとの宣言が記憶にある人も多いだろう。その時代を読むスピード感をもって、社員の多国籍化(60か国以上)など、積極的にダイバーシティに取り組む様子がみえる。女性活躍については、社内に託児所を設置したり、制度の拡充などで両立支援を講じたりしている。しかし、数字で見える現実は、新入社員の男女割合が半数なのに対し管理職以上の女性の割合が18%であり、課題もある。

楽天が女性活躍推進に本格的に取り組み始めたのは2015年。人事部内に専任組織「ダイバーシティ推進課」を設置、2019年までに女性の管理職以上の割合を22%にすることを掲げた。理想は、「女性が性別やライフステージにかかわらず、自分の能力を生かしたキャリア形成ができている状態」だという。