全体としては1時間半程度と、スペシャルイベントとしてはやや短めの発表会だったが、登場した製品数から言っても妥当なところだろう。Touch Barについては色々とネガディブな感想も書いたが、実際のところ、使い勝手については興味津々だ。出荷は早くとも11月中旬以降というところだが、とにかく早く触ってみたい。そんな魅力にあふれる製品が久々に登場したと思う。Touch Bar搭載と重さ、価格の兼ね合いから13インチモデルに人気が集まりそうだが、プロユースなら15インチ一択だろう。
筆者は近年、AppleはMacにしっかり力を入れていないーー少なくともクリエイターのほうを見て製品を作っていないと感じていた。もう少し厳密に言えば、自社製品を出しているDTMやビデオ編集以外の分野は忘れてしまっている、という感覚だ。3DCGなどパワフルな業務に使うハイエンド製品のMac Proは登場以来約3年放置されているし、ジョブズ時代、特にPowerPCを搭載していた頃のような、他社製品との性能比較といったアピールもやめてしまっている。
一部のMacファンが主張するように、Appleが目指すのは性能競争ではなくトータルの使い勝手である、という主張には一定の理解を示すが、結局はMacは計算機であり、プロの商売道具でもあるのだ。道具としての性能は高いことに越したことはない。今やWindows向けの開発者向け会議ですら、出席者の大半がMacBookシリーズを使っているという状況なのに、肝心の先端分野(AIや3D映像制作など)ではMacではなくWindowsワークステーションが使われているのは何とも微妙な気分だ。構成技術が進歩しているのに手をこまねいて見ているというのは、端的に言って手抜きに等しい。不毛なスペック争いをしろというのではなく、現場が求める最高の性能を定期的に提供してほしいということなのだが……。
今回のスペシャルイベントでは、こうした筆者が抱えていたフラストレーションが、Adobeなどの登場で、まだ完全に忘れ去られたわけではないのだな、と、ある程度は緩和された。とはいえ、例えば15インチのMacBook ProがRAMを32GB搭載できない点など、本当にハイエンド向けかという点では惜しい仕様も見られる。また今回、MacBook ProのCPUは第6世代のCore iシリーズ(Sky Lake)ということで、来年早々にもノート向けハイエンド製品が登場するといわれる第7世代(Kaby Lake)が登場したらどのタイミングでアップデートがあるのかも気になるところ。微妙な時期の登場になってしまったが、この先AppleがMacをどう扱っていくつもりなのかを垣間見る上でも重要な製品となりそうだ。