Touch barについては、デモを見る限り面白そうだし、話題性もあるため、肝心の対応アプリもすぐに増えてくることだろう。実際、自社製品であるFinal Cut Pro Xだけでなく、Adobe Photoshop、Microsoft Office、Algoriddim dJay Proといった各ジャンルの定番アプリがTouch Bar対応を済ませたことをアピールし、安心感も演出してみせた。あとは開発者のアイデア次第で、この狭い領域だけを使ったゲームが登場しても面白そうだし、人気が出ればデスクトップ用にも、現在のMagic Keyboardの後継として、Touch Barを搭載した製品が登場するかもしれない。

AdobeのPhotoshop エクスペリエンスデザインマネージャ、Bradee Evans女史によるデモ。Appleの発表会でPhotoshopにスポットが当たるのは久々な気がする

ただし、筆者はTouch Barが実際にプロが「使ってくれる」機能になるかについては、正直ちょっと疑問視している。というのは、Fキーをはじめとしてよく使うキー(コンビネーション含む)というのは、キーの位置など見なくても体が覚えていて、場合によっては連打ともいえるほど多用するものだ。彼らにとって(場所を覚える意味でも)Fキーが物理的になくなるというのも不安だろうし、わざわざ見なくては場所も定かではないというのは、正直不便になるだけだ。また、あまり多用することになると、視線の上下移動が頻繁になりそうな点も、作業中の疲労が増えるのではないかという懸念がある。

また、これはアプリ側のアイデアや作り込みの問題になるが、機能としてTouch Barでなければ困る(使いづらい)機能がどれくらいあるのかも疑問だ。発表会では「写真」アプリの傾き調整をTouch Barで行っていたが、個人的にあれはトラックパッドを2本指でタッチし、左右にツイストしたほうが直感的でわかりやすい操作だと思っている。そもそもForce Touch Trackpadが大型化して使いやすくなったというなら、トラックパッドで操作すれば十分な機能も多いはずだ。逆に、Touch Bar専用の機能を増やしすぎると、ほかの機種のユーザーが不便になってしまう。痛し痒しといったところだろう。

こうした懸念に応えてというわけではないだろうが、13インチモデルにはTouch Barのないモデルも存在する。こちらは従来のFキーが恋しい層向け、というよりは入門機的な位置付けで、CPUも低速な代わりに値段も安い。こちらは即日発売となったので、薄さと軽さに興味があればコストパフォーマンスはなかなかいいと言えるだろう。