アンカーに死角はないのか
こうしてみると、アンカーは日本の家電市場でも成功できるように思えてくる。ただし、今回の家電ブランドの展開にあたり物足りなさを感じたことが2つある。そこが同社にとっての課題となるのではないだろうか。
ひとつはブランディングについて。ブランドは他のものと区別するために存在するものであり、「eufyだから買いたい」という気持ちを誘発する何かが必要になる。しかし、新製品が既存のカテゴリーの商品群だったからか、eufyらしさが見えてこない。品質と価格、サポートで攻めるアンカーらしさは理解できるし、今回の新商品が健康と安全を後押しするというコンセプトのもとに発表されたこともわかる。しかし、家電ブランド「eufy」の"eufyらしさ"はもっと鮮明にしていく必要があるのではないだろうか。
商品展開に関して、井戸代表は「単に世の中にある家電製品を作り直したいわけではない」とし、将来的に商品ラインナップを拡充し、スマートフォンアプリと連携した家電製品をリリースすることを検討していくという。Amazonの音声認識デバイス、alexaの対応商品も2017年に販売したい(alexaの日本発売が確定的だと見ていいかもしれない)と語っている。どんな製品、デザイン、コンセプトをもってしてeufyらしさを作り上げていくのかには期待したいところだ。
もうひとつ、商品説明について。これまでの取扱製品はモバイルバッテリーなど、それほど高価なものでもなく、ある意味、カタログスペックだけでも購入できる製品だった。しかし、今回発表した「RoboVac 20」は安いといっても3万円弱する商品。ウェブサイト上では、商品概要があるが、他社と比べると、商品説明はかなり質素だ。
ネットが消費者との接点となる同社にとって、ウェブサイトの充実は、重要になるはず。品質にも強い自信を持っているアンカーだからこそ、逆に損をしているのではないか。今回の家電ブランドをもってして、日本市場では来年度、売上7-8億円、米国では20-30億円を目指していくとする同社だが、こうした課題は解消されるのか、アンカー流が日本市場にどこまで食い込めるのか、eufyブランドがどうなっていくのか、これからに注目していきたい。