日本マイクロソフトは9月12日、東京の品川本社にて「Xbox Showcase」を開催。2016年中の発売を目指す据え置き型ゲーム機「Xbox One S」や、2017年ホリデーシーズンにローンチ予定の次世代機「Project Scorpio」について発表した。

欧米では幅広い人気を持つ「Xbox One」だが、残念ながら日本市場では熱気を帯びているとはいいがたい。それでも日本マイクロソフトは、2001年11月から始めた据え置き型ゲーム機のビジネスを続けることを表明している。Microsoft自身が、Windows 10の数ある訴求ポイントの1つとして「ゲーム」を大きく扱っているからだ。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当 高橋美波氏

日本マイクロソフトの高橋美波氏は、「Windows 10は新しい機能を踏襲し、さまざまな付加価値を与え続けている。Windows 10ゲーミングという新たなシナリオで、利用者に価値観を提供したい」とその取り組みを説明する。

これには2016年の夏に発表した「XBox Play Anywhere」の存在が大きい。Windows 10とXbox One、いずれかのダウンロード版ゲームタイトルを購入すると、最大10台という制限はあるものの、PCでもXbox Oneでもプレイ可能になるプログラムだ。

DLC(ダウンロードコンテンツ)、ゲーム中の成績、セーブデータなどが同期されるため、ユーザーは場所や状況を問わずにゲームを体感できる。ゲーミング系のPCとXbox Oneを所有している利用者にとっては、大きな恩恵を受けられるプログラムだ。

「Xbox Play Anywhere」対応タイトル。これらはPCでもXbox Oneでもプレイできる

ゲームタイトルとしては、「Forza Horizon 3」や「ReCore」などが、Xbox Play Anywhere対応タイトルとして発表済み。次々と施策を展開する日本マイクロソフトの努力に、首を傾げる読者諸氏も少なくないだろう。先述のように日本市場でXbox Oneは苦境に立たされているが、とある関係者は「米国本社は『Windows 10ゲーミング』というシナリオをかなり重視している。Xbox Oneというプラットフォームではなく、Windows 10を通したゲームプラットフォームという視点でアプローチしている」からだと述べた。

今後リリースするXbox One対応タイトル。ほぼ毎月、何らかのタイトルをローンチする

少し乱暴な言い方をすると、WordやExcelといったビジネス色が濃いこれまでのWindows環境を踏襲していたのでは、ハイエンドなゲーミングPCの需要が増えることはない。あくまでもXboxという据え置き型ゲーム機を基盤に、Windows 10プラットフォームの拡充を目指すシナリオに沿った戦略といえよう。

とはいえ、Xbox Oneプラットフォームの拡充も続けるという。インディーズゲームクリエータープログラムである「ID@XBOX」も継続する。既に欧米では300タイトルをローンチし、1,000タイトルが開発中。日本でも100社にデバイスを提供し、ゲームタイトル開発を進めている。

また、新デバイスの「Xbox One S」は、電源ユニットを内蔵しながら、現行モデルのXbox Oneと比べて40%の小型化に成功。4K Ultra HD Blu-rayや4Kビデオストリーミング再生に対応し、日本マイクロソフトは2016年内の発売を改めて公表した。ただし、詳しい時期や価格については触れず、「年内商戦には間に合わせるように準備中だ」(高橋氏)と述べるに留まった。

参考展示されていた「Xbox One S」。既にプレイ可能な状態だった

インディーズゲームクリエーター向けの「ID@Xbox」も順調とのこと

既存のXbox Oneに関しても、値下げキャンペーンを2016年9月1日から12月31日まで実施

Xbox One Sは、HDR(ハイダイナミックレンジ)カラーにも対応し、「4K解像度以外にも色の深みなどを再現する」(高橋氏)。日本でも4K Ultra HD Blu-rayは少しずつ対応タイトルが増えているが、日本マイクロソフトは、「ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメントからも年内に20タイトルが追加される。来春にかけて4Kコンテンツも充実するので、Xbox One Sを活用してほしい」(高橋氏)とアピールした。

今回、E3 2016で発表済みの次世代機「Project Scorpio」に関して、初の国内発表も行われた。Project Scorpioは、6TFLOPSのGPUを搭載し、4Kゲーミングや高画質VRゲームへの対応を予定している。グローバルでは2017年ホリデーシーズン(米国のクリスマスから年末年始にかけての期間)に発売する予定だが、日本を含めた各国での展開については今後の発表を待たなければならない。

Microsoft Head of Xbox Phil Spencer氏もビデオメッセージで登場

E3で発表した「Project Scorpio」の様子が映し出された

日本マイクロソフトは、Windows 10 & Xbox Oneを通したゲーミング市場の拡大に向けて、年内にもう1つイベントを予定している。内容については明かされていないが、ゲーミングPCのラインナップ拡充や新規タイトルがそろったタイミングで、何らかの新たな価値を提示するのではないかと筆者は推察する。

会場にはXbox Play Anywhere対応タイトルとして「Forza Horizon 3」をハンドルなどを備えて展示していた

comcept 稲船敬二氏が「自分たちが遊びたいゲームを作ろう」というコンセプトで作られた「recore」

「鉄拳7」もプレイ可能な状態で展示。これらはすべてPC上で動作していた

阿久津良和(Cactus)