東京の水辺ににぎわいを創出すべく東京都建設局が進めている社会実験“かわてらす”。京都の“川床(かわどこ)”の東京版だ。前回は“かわてらす”について東京都に話を聞いたが、今回は実際に“かわてらす”に参加した2店舗のリアルな声を取材した。

1:日本橋 老舗の味で真の地域貢献を実践

日本橋川沿いにある、日本の食をテーマにした文化情報発信型飲食店「豊年萬福(ほうねんまんぷく)」。都内で初めて“かわてらす”をオープンした店としてニュースにもなった。

豊年萬福(ほうねんまんぷく)」東京・中央区

場所は、麒麟の像でおなじみの日本橋すぐ近く。川向こうには日本橋~神田川~隅田川を通る遊覧船の発着所があり、乗船客へのPRには抜群の立地ともいえる。目の前を走る巨大な首都高を、下から眺めることができるのもこの場所ならでは。取材した日は、外国人観光客も多く、テラス席で記念撮影をする人の姿もみられた。

同店のテラス席からは遊覧船の発着所が見える

取材に応じてくれたのは、同店店長の星野太助さん。「うちは2013年のオープン時から、テラス席を設けていました。それを今回の“かわてらす”参加によって拡張したのです」。開店当初は、同店の敷地内に収まる範囲で野外の席も設けていたが、東京都からの声かけもあり、河川敷地にまでテラス席を拡張した。

「豊年萬福」の星野太助店長

“かわてらす”とは、このように事業者の敷地を越えて、河川敷地にまで突き出した施設を設けている。

同店にとっては新たな工事費用も必要となるが、どのようなメリットがあるのだろうか。 元々あったテラス席だとスペースもあまりなく、拡張という話が渡りに船だったこと。さらに都内初ということで同店が注目を集めると、日本橋の地域全体の活性化に貢献できるのではないかと考えたためだという。実際、社会実験をスタートさせる際には多数のメディアの取材が入り、日本橋エリアに目が向くひとつのきっかけにもなったという。

“地域のために”と言葉を重ねる星野さん。実は「豊年萬福」は“かわてらす”参加以前から地元に受け入れてもらうことに力を注いでいたという。