オープンソースに無限の可能性を見出したOculus Rift

オープンソースの利点は、コンテンツ開発会社にあらゆる開発の自由を提供することであり、コンテンツや活用法に無限の多様性が生まれるということだが、一方でそれは、Oculus Riftがプラットフォームではなくテクノロジーとして普及拡大していくことを意味している。ユーザーを束ねて大きな市場を生み出していくためには、Oculus Riftを活用した強力なコンテンツプラットフォームが創出される必要があるが、オープンソースであるが故に、それもまた市場の動向に委ねられているといえるだろう。

このように、3社は三者三様の戦略でVRゴーグルを活用するためのコンテンツ供給を目指そうとしている。それぞれの戦略がどのように結実し、私たちのエンターテインメントや日常の体験を変えていくのか、注目していきたいところだ。

VR普及の前提条件とは

しかしながら、VRゴーグルという端末が普及への第一歩を踏み出すためには、VRゴーグル故の高いハードルが存在する。それは、VRゴーグルが提供する体験の面白さは、実際に体験したものにしか理解することができないということだ。スマートフォンゲームなどであれば、画面の様子を動画で伝えることで消費者にイメージを伝達することができるが、VRは実際にゴーグルを装着して目の前に広がる景色を見たり、コントローラを操作してその挙動を体験したりしなければ、それが面白いのかどうかを判断できないのだ。

VRゴーグルは衝動で気軽に購入できるほど安価な買い物ではない。HTC Viveは99,800円(税抜)、Oculus Riftが599ドル、最も安価なPlayStation VRも44,980円(税抜)する。興味本位で購入できるような商品ではないだけに、消費者の購入意欲をどのように喚起するかが各社にとって大きな課題となってくる。

こうした課題に対して、HTCはパートナー企業と共同でHTC Viveのコンテンツを体験することができるスペースを展開するとしており、混雑対策のためにネット予約も導入するという。ソニーは既存ゲーム機で築いた強力な流通網を駆使して、PlayStation VRを体験できる場を設けていくことが予想される。こうした場を通じて、VRゴーグルがもたらす体験の面白さを多くの人に伝えられれば、「高価でも欲しい」という強い購入意欲を消費者の中に生み出すことも可能だろう。

HTCが展開する体験スペースのイメージ

VRゴーグルに対する購入意欲を喚起するために必要なのは、端末を売る前にまず“体験の場”を生み出すことだ。それは、消費者向けにサービスを提供している企業や、公共施設、教育の場にソリューションを提供しているベンダー企業にとって、大きなビジネスチャンスが生まれていることを示唆している。つまり、VRゴーグルの体験機会そのものが、新たなビジネスになりうるのだ。