たとえば内田洋行が提供する「Future Class Room」。これは、産官学の実証実験を通じて得られた知見をもとに、ICTを活用したアクティブ・ラーニングなどに最適化された教室だ。筑波大学附属小学校がこのFuture Class Roomを採択し、「未来の教室」として活用している。この小学校の場合、教育方法における先進的な研究開発モデル校なので、アクティブ・ラーニングのノウハウが豊富だ。先進的な教室を導入しても、十分に機能を生かし切れる。

筑波大学附属小学校の未来の教室

教育格差を生みかねない問題

ところが、そうしたノウハウがない学校の場合、先進的な教室を設けても“宝の持ち腐れ”となりかねない。この問題が次の問題を生む。それは“教育の格差”だ。

2020年度からの大学入試改革により、現在のセンター試験は廃止され新たな試験方法が導入される。この新たな試験では、詰め込み型の知識ではなく、“知の応用力”が試される。ここ最近、さまざまな教育現場、企業からアクティブ・ラーニングという言葉をよく聞くようになったのは、この大学入試改革で試される能力を育てるといわれているためだ。アクティブ・ラーニングに慣れていない学校で教わった生徒と、熟知した学校で教わった生徒では、大学入試時に差がつく可能性がある。

内田洋行の大久保社長は「単に機器を納入しているだけではだめ。教員に対する研修もシッカリと対応していかなくてはならない」と念を押す。

文科省が目指す1人1台体制への移行、大学入試改革まであまり時間がない点も頭の痛いところだ。前述のとおり、3万以上の小中学校があり、新しい教育プラットフォームの導入が早い学校、遅い学校が生じてしまうだろう。この場合も教育の格差となりかねない。

いずれにせよ、教育改革には巨大なエネルギーが必要となる。たとえは悪いが、楽曲鑑賞がCDから音楽ファイルに移行したように、テレビ放送がアナログからデジタルに移ったように、“教育のフォーマットが変わる”ともいえそうだ。大久保社長は「今回2社の協業を発表したが、我々だけではなく他社を巻き込んだ強力なエコシステム構築が必要。この発表が、その“うねり”になれば……」と語った。