Three World HPC System

次の図は縦軸がLINPACK性能、横軸はTOP500の順位を取ったグラフ(2015年11月のTOP500)であるが、2つの大きな変曲点があるという。4.42位、6.22PFlopsと36.6位、952TFlopsのところで分割して、それより上位がリーダーの世界。中間がニー(膝)の世界、一番下がメインストリームの世界で、それぞれの世界でシステムの作りが違ってくるという。

TOP500のLINPACK性能とランクのカーブから、システムを3種類に区分する

システムをリーダーとニー(膝の部分)とメインストリームに分け、それらの平均性能の年次推移をプロットしたものが次のグラフである。

メインストリームの平均性能の伸びは滑らかであるが、リーダーとニーのシステムの平均性能は、かなりごつごつしている。

A Reality Check Literally

今年のニュースはLIGOで重力波の観測に成功したことである。NSFが大金をつぎ込んできたが永らくまったく成果がなかったが、さらにお金をつぎ込んで大成功を掴んだ。

ワシントン州Hanfordとルイジアナ州Livingstonに設置されたLIGO観測所

2つのブラックホールが合体する時に出た重力波を観測したとのことであるが、この検出にはスパコンが大きな役割を果たしているという。

LIGOのノイズを除去して、スパコンで予想される信号を取り出すチャープフィルタ (この図はYoutubeからのコピーである)

ブラックホールの合体のイメージ図

2015年9月14日の観測で、太陽質量の29倍と36倍のブラックホールが合体し、結果として太陽質量の62倍のブラックホールが作られた。そして、その差の太陽3個分の質量が重力波として放出され、13億年の時を経て地球に到達した。この放出のピークエネルギーは、宇宙全体の星の放出するエネルギーの合計の50倍のエネルギーに達したという。

観測波形から太陽質量の29倍と36倍のブラックホールが合体し、3倍の質量が重力波エネルギーとして放出されたことが分かった

Conclusion 2016

TOP500では、HPLベンチマークでLINPACK性能を測定してランキングを行っているが、HPCコミュニティはHPCを正しく代表しているであろうか? HPLは、その性能を公表しようというシステムの結果だけが発表されており、 Amazon、Google、Microsoftのシステムはクラウドに隠されている。また、情報関係や国防関係のシステム、銀行や金融関係のシステムも公表されない。

さらに、Antonのように特定目的のために作られたマシンや、SKA電波望遠鏡のデータ処理装置などもHPLベンチマークを実行することはないであろう。D-Waveの量子コンピュータは、まったく別のクラスのマシンである。最後に同氏は「我々は、高速のコンピュータが本当にどれだけ速いのか理解しているのであろうか? 本当のHPCの姿を把握するにはどうすれば良いのであろうか?」と聴衆に問いかけて基調講演を締めくくった。

TOP500に入っていないスパコンは数多い。どうすればHPCの本当の姿を把握できるのか?