次がエンベデッドビジョンの話である。こちらの市場規模は5年間で40億ドルと想定されている(Photo10)。こと自動車周りに関して言えば、複数台のカメラを搭載するのは当然で、実際には複数種類のセンサ類からのデータを集約して処理するセンサフュージョンの機能が求められる事になり、こうした部分でFPGAが有利である、という説明だ。こうした結果、ADAS向けにさまざまなメーカーがすでに同社のFPGAを利用しているとする(Photo12)。
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Photo10:自動車向けのエンベデッドビジョンはそのままADASに繋がる話でもある |
Photo11:カメラによって求められる機能が変わってくるため、処理の内容も変わってくることになる |
Photo12:よく見ると2015年と2016年は、掲載されているメーカーは同じであるが、一応さらに4メーカーほど増える「予定」なのでバーが若干長いらしい |
話をビジョンシステム全体に広げると、マーケットそのものは急速に広がっており、実際採用例も多いとする(Photo14)。
3つ目がインダストリアルIoTの分野。そもそもIoTは非常に広範にわたる概念だが、XilinxはそのなかでもPhoto15の左側にあたる、産業分野に特化するとしている(Industrial IoT:IIoT)。このIIoTの分野では、そもそも効率を1%改善するだけで大きなコスト削減が可能になるから、相対的に大きな投資が見込める(Photo16)事もあり、Xilinxはこの分野で25億ドルのSAMを見込んでいる(Photo17)。
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Photo15:民生向けに関してはコスト圧力が半端でなく、そもそもXilinxの製品を採用することすら難しいというのもその一因であろう |
Photo16:例えばシステムの構築に1000億ドル掛かっても、継続して節約ができれば数年で元が取れるから投資が行われやすい |
Photo17:治安維持というとちょっと不穏な表現だが、監視カメラなどを含むシステムの事を指すようだ |
ここで大きな意味をもつのが「Zynq」である。Zynqの投入前は、ハイエンド向けにMPUなどと組み合わせる形でFPGAを入れており、逆にこうした高コストの分野にしかシェアがなかったが、今ではZynqと組み合わせた低コストソリューションも提供できるため、ローコスト向けまで幅広く広がった(Photo19)、というのがXilinxの主張だ。
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Photo18:Dual Cortex-A9で間に合う程度の性能の領域は基本Zynqでカバーできる事になるので、適用範囲が広がったのは確か |
Photo19:実際にはAFE(Analog Front End)を含むアナログブロックや、コネクティビティ側に場合によってはPHYなどが別に必要になる訳だが、そのあたりは2010年も現在も同じ状況なので割愛したということだろう |
最後が5Gである。6月22日(米国時間)には、3GPPがNB-IoTの標準化作業が完了したというリリースを出していたが、LTEが一段落した現在は、キャリアはいずれも5Gに向けての取り組みに余念が無い。
その5Gに関してXilinxは5年で21億ドルのSAMを想定している(Photo20)。もともと4Gの世代も同社の売り上げにかなり大きく貢献していたわけだが(Photo21)、5Gに関しても現在のところ順調であり、標準化が完了したあとの実用化段階でも大きなビジネスが期待できることを仄めかした(Photo22)。
以上が戦略のアップデートの主要な部分であるが、最後にちょっと面白い話があったので説明しておく。5G Wirelessに関してこんな製品ロードマップが示された(Photo23)。3G~4Gは28nm世代製品で、4G~Pre 5G世代は現在の20/16nm世代製品でそれぞれ構築されているが、5Gに関しては16nmと7nm世代での構築になると同社は見込んでいる。つまり10nmはスキップする、というのが同社の決定だそうで「現在我々の投資は16nmと7nmに集中している」(Glaser氏)という話だった。実際、2015年からやっと16FF+を利用した製品が登場したばかりだから、今後3~4年はこれがメインとなる。となると次の製品は(2017年あたりに投入されると見込まれる)10nmよりも、むしろその先にある7nmを先行させたほうが賢明、という判断だったようだ。ただこれは当然ながらパートナーであるTSMCの7nmプロセスの動向次第という部分もあるわけで、傍から見るとちょっとリスクの高い賭けな気もしなくもない。いずれ機会があったら、もう少し細かく「なぜ10nmをスキップできたのか」を聞いてみたいところだ。